■黄金比の眠るほこら(その29)

【1】マルファティの問題

(Q)与えられた三角形の内部に,それぞれ2辺ずつに接し,互いに外接する3個の円を作図せよ.

・・・というのがマルファティの問題である.イタリアのマルファティが1803年に提唱し,約20年後,スイスのシュタイナーが定規とコンパスによる作図に成功した.しかし,安島直円がこの問題を与えその解答を述べたのはマルファティの論文よりも約30年前のことである.

(Q)互いに外接する3個の円(半径r1,r2,r3)がある.これらに外接する三角形に内接する円の半径rを求めよ.

(A)r=2√r1r2r3/{√r1+√r2+√r3−√(r1+r2+r3)}

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 マルファティは3個の円の面積の和が最大になると信じていたらしいが,今日ではどのような三角形についてもマルファティの円は最大面積を与えるものではないことが証明されている.たとえば,正三角形について計算すると,マルファティの3個の円の和よりも,内接円とそれに外接しそれぞれ2辺に接する2個の小円の和のほうわずかに大きいことが計算できる.

 ところで,3次元空間の四面体では必ずしも3面に接し互いに外接する4個の球を作ることができない.また,正四面体については互いに接する4個の球が4個の球の体積を最大にするらしい(少なくとも内接球と3個の小球の和よりも大きい).これらは平面幾何学の問題を3次元あるいはそれ以上に拡張する困難さを示している.

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