■n次元平行多面体数(その35)

 n次単体的多面体に対しては,デーン・サマービル関係式

  (−1)^(n-1)fk=Σ(k,n-1)(−1)^j(j+1,k+1)fj

が成り立つ.

 ここでは,3次元の単体的多面体で正三角形だけからなる凸多面体について考えてみたい.

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【1】デルタ多面体

 すべての面が正三角形で構成されている凸多面体をデルタ多面体といいます.デルタ多面体の面数は

  f=4,6,8,10,12,14,16,20

で全部で8種類あります.このうち,正4面体,正8面体,正20面体は正多面体に,デルタ6面体(重三角錐),デルタ10面体(重五角錘),デルタ12面体,デルタ14面体(三角柱の正方形面に四角錐を3個載せる),デルタ16面体(四角反柱の正方形面に四角錐を2個載せる)はジョンソン立体にも分類されるのですが,デルタ多面体はそれらを含めて全部で8種類あり,面の総数が指定されれば面の配置は唯一に決定されます.逆にいうと,もし凸多面体の各面が正三角形ならば8つの多面体の中のどれかひとつであるということになります.

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【2】デルタ多面体の構成

 オイラーの多面体定理は,8個の凸なデルタ多面体が存在することの証明の基礎にもなります.3次元凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,

  v−e+f=2  (オイラーの多面体定理)

が成り立ちます.これは3次元立体について,0次元の特性数であるv,1次元の特性数であるe,2次元の特性数であるfの関係を述べたものと解釈され,最も美しい数学の10大定理の1つに挙げられるものです.

 また,正則な多面体とはその面が正多角形で,どの頂点にも同じ数の面が集まっている凸多面体のことで,正多面体では

  pf=2e,qv=2e

でしたが,正則とは限らない一般の多面体では

  Σpi=p1+・・・+pf=2e,

  Σqi=q1+・・・+qv=2e

となります.

 デルタ多面体では,pi=3,3≦qi≦5ですから

  3f=2e   (fは偶数)

  3v≦2e≦5v

これをオイラーの多面体定理

  v−e+f=2

に代入すると

  6≦e≦30

これより

  4≦f≦20,(3≦v≦20)

が得られます.3f=2eよりfは偶数ですから,4面体から20面体までの偶数多面体がデルタ多面体の候補となります.

 このように下限・上限が求められるとそれを実際に構成する際に非常に有用となります.

   f      e      v

   4      6      4

   6      9      5

   8     12      6

  10     15      7

  12     18      8

  14     21      9

  16     24     10

  18     27     11

  20     30     12

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