■n次元平行多面体数(その27)

【1】菱形六面体の計量

 菱形の対角線の長さを2dと2,また,この菱形の鋭角が60°より大きく90°より小さいとすると,dの取りうる値は

  1<d<√3

の範囲にあります.

 60°のとき菱形六面体の体積は最小となり,90°(すなわち立方体)のとき最大となります.結晶学的な見方をすると60°は面心立方格子,90°は単純立方格子と関係しているというわけです.

 また,菱形の鋭角が3つ集まって構成される頂点を原点として,この菱面格子の3つの基本ベクトルを

  a↑=(d,1,0)

  b↑=(d,−1,0)

  c↑=(x,0,z),x^2+z^2=d^2+1

とおきます.

 このとき,菱形の面積,体積は

  S=2d,V=2dz

菱形の鋭角をθとおくと

  tan(θ/2)=1/d → θ=2arctan(1/d)

で表されます(60°<θ<90°).

 次に,xとzをdで表してみることにしましょう.

  a↑・c↑=(d^2+1)cosθ=dx

より

  x=(d^2+1)/dcosθ

   =(d^2+1)/dcos(2arctan(1/d))

   =(d^2−1)/d

  z^2=d^2+1−x^2=3−1/d^2

 ベクトルc↑とx軸のなす角φは

  cosφ=x/(d^2+1)^(1/2)=(d^2−1)/d(d^2+1)^(1/2)

で求められますが,このように菱形六面体の計量値はすべてパラメータdを用いて表すことができます.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 菱面体の中心の座標は(d+x/2,0,z/2)ですから,8頂点のうち6つ

  (d,1,0),(d,−1,0),(2d,0,0)

  (x,0,z),(d+x,1,z),(d+x,−1,z)

までの距離Rはすべて等しく

  R^2=(x^2+z^2)/4+1=(d^2+1)/4+1

と計算されます.すなわち,これらは半径Rの同心球面上に位置します.

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