■n次元平行多面体数(その24)

 菱形の鋭角(acute)m個と鈍角(obtuse)n個が集まる頂点をamonで表すことにすると,菱形の鋭角と鈍角の和は

  a+o=180°

ですから,頂点に4つ以上の鈍角が集まることは不可能です.頂点に集まる角がすべて鈍角である場合はqi=3すなわちo3で,菱形の鈍角が120°より小さいことが必要になります.また,この菱形(鋭角が60°より大きい)が頂点に集まる角がすべて鈍角である場合は最大1頂点に5枚ですから,qi=4またはqi=5ということになります.

 さらにまた,鈍角と鋭角が混ざっている頂点がある多面体が菱形二十面体と菱形十二面体(第2種)なのですが,このような必要条件を満たす対象を広めに見積もると

  pi=4,3≦qi≦5

ですから

  4f=2e

  3v≦2e≦5v

これをオイラーの多面体定理

  v−e+f=2

に代入すると

  e≧12,f≧6

という下限が得られます.

 しかし,f=6は細い菱面六面体と太った菱面六面体ですから,これだけでは何の手がかりも得られていないことと同じです.そこで,もう少し数学的に考察して上方からの制限(f≦30,e≦60)を設けてみたいと思います.

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 o=120°(a=60°)の菱形では平面充填形となってしまいますから,o3を有する菱形多面体の面は,正三角形を2個つなげた菱形(対角線の長さの比が1:√3)よりも太っていることが必要で,黄金比や1:√2の菱形などがその候補となるというわけです.

 また,この菱形(鋭角が60°より大きい)が頂点に集まる角がすべて鋭角である場合は最大1頂点に5枚ですから,a3またはa4またはa5ということになります.また,鈍角と鋭角が混ざっている頂点がある場合,a+o=180°ですから,a1o1,a2o2は存在し得ず,a3o1,a2o1,a1o2のみが可能となります.実際には

  扁長菱面体:a3=2,a1o2=6

  扁平菱面体:a2o1=6,o3=2

  菱形十二面体:a4=6,o3=8

  菱形十二面体(第2種):a4=2,a3o1=4,a1o2=4,o3=4

  菱形二十面体:a5=2,a3o1=10,o3=10

  菱形三十面体:a5=12,o3=20

のように必要条件として,さらに

  Σmi=Σni=e

を満たすような頂点が可能となります.

 以上をまとめると

  q=3:a3,a2o1,a1o2,o3

  q=4:a4,a3o1

  q=5:a5

であり,q=6となる頂点は不可能です.

 また,o3をもたない多面体ではある頂点に鋭角が3つ集まってa3となるのですが,それは扁長菱面体のケースですから平均会合面数qmは最小(qm=3)となり除外することができます.こうしてqmが最大になるのはa5とo3のみからなる菱形多面体の場合と考えられます.

 このとき,a5の頂点数をx,o3の頂点数をyとすると,

  5x+3y=2e

  5x=e,3y=e

が成り立ちますから,

  qm=(5x+3y)/(x+y)

  5x+3y=2e,x=e/5,y=e/3

を代入すると

  qm=15/4

 これより,

  3≦qm≦15/4<4

となるのですが,

  4f=2e,qmv=2e

をオイラーの公式に代入すると

  12≦e≦60 → 6≦f≦30

となって,fの上限値が得られます.

 4f=2eよりeは偶数ですが,さらに

  5x=e,3y=e

よりeは5の倍数かつ3の倍数ですから,fは15の倍数であることがわかります.しかし,f=15,30,45,60,・・・と順に検討しなくても,a5とo3のみからなる菱形多面体は,オイラーの公式から直ちにf=30であることが導き出されます.

 以上のようにa5とo3のみからなる菱形多面体に絞って考えると,fの上限:f≦30を簡単に求めることができるというわけです.

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