■奇数ゼータと杉岡の公式(その29)

 今回のコラムでもその後の杉岡幹生氏の結果を簡単に紹介したい.

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【1】Σ(1,∞)1/(2n−1)^k(1+(2n−1)^2)

  [参]加藤和也・黒川信重・斉藤毅「数論T,Fermatの夢と類体論」岩波書店

によると

  Σ(-∞,∞)1/(1+n^2)=π/tanh(π)

  Σ(-∞,∞)1/(1+n^2)^2=π/2(exp(4π)+4πexp(2π)−1)/(exp(2π)−1)^2

の2つの公式は,

  Σ(1,∞)1/n^2=π^2/6=ζ(2)

  Σ(1,∞)1/n^4=π^4/90=ζ(4)

のようにゼータ関数の値を直接表すものではないが,同様の世界に属していて,ζの香りが漂っているように思われるとコメントされている.

  http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page175.htm

において,杉岡幹生氏は一般に

  Σ(1,∞)1/n^k(1+n^2)

はkが偶数のとき明示的に求められるが,奇数のときは関数を閉じた形に表せないだろうと述べている.すなわち,ζの奇偶性に対応することを主張しているのである.

 変数nを奇数だけにすると

  Σ(1,∞)1/(2n−1)^k(1+(2n−1)^2)は

となるが,

  http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page183.htm

において,杉岡氏はk=0の場合,2πを周期とする周期関数

  f(x)=Σcos((2n-1)x)/(1+(2n-1)^2)

を考えると,

  1/(1+(2n-1)^2)=1/π∫(-π,π)f(x)cos((2n-1)x)dx

 これを部分積分すると

  1/(1+(2n-1)^2)=1/π∫(-π,π)(Σ(2k-1)sin((2k-1)x)/(1+(2k-1)^2))sin((2n-1)x)/(2n-1)dx

これを縦に足し合わせると

  Σ1/(1+(2n-1)^2)=1/π∫(-π,π)(Σ(2k-1)sin((2k-1)x)/(1+(2k-1)^2))Σsin((2n-1)x)/(2n-1)dx

 ここで,フーリエ級数の公式

  cosh(π/2-x)=4/πcosh(π/2)Σsin((2k-1)x)/(1+(2k-1)^2)

  Σsin((2n-1)x)/(2n-1)=π/4

より,

  Σ1/(1+(2n-1)^2)=π/4tanh(π/2)

と美しい式が得られた.

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 同様のことをk=1の場合について考える.2πを周期とする周期関数

  f(x)=Σsin((2n-1)x)/(2n-1)(1+(2n-1)^2)

に対して

  1/(2n-1)(1+(2n-1)^2)=1/π∫(-π,π)f(x)sin(nx)dx

 これを部分積分すると

  1/(2n-1)(1+(2n-1)^2)=1/π∫(-π,π)(Σcos((2k-1)x)/(1+(2k-1)^2))cos((2n-1)x)/(2n-1)dx

これを縦に足し合わせると

  Σ1/(2n-1)(1+(2n-1)^2)=1/π∫(-π,π)(Σcos((2k-1)x)/(1+(2k-1)^2))Σcos((2n-1)x)/(2n-1)dx

 ここで,フーリエ級数の公式

  sinh(π/2-x)=4/πcosh(π/2)Σcos((2k-1)x)/(1+(2k-1)^2)

  Σcos((2n-1)x)/(2n-1)=1/2log(cot(x/2))

より,

  Σ1/(2n-1)(1+(2n-1)^2)=1/(4cosh(π/2)∫(0,π)sinh(π/2-x)・log(cot(x/2))dx

となって,関数を閉じた形に表せないというのが杉岡氏の計算結果である.

  Σ(1,∞)1/(1+(2n−1)^2)

  Σ(1,∞)1/(2n−1)(1+(2n−1)^2)

について示したが,杉岡氏は一般に

  Σ(1,∞)1/(2n−1)^k(1+(2n−1)^2)

はkが偶数のとき明示的に求められるが,奇数のときは関数を閉じた形に表せないだろうと述べている.すなわち,ζの奇偶性に対応することを主張しているのである.

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【2】フーリエシステムと奇数ゼータ(その2)

  http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page182.htm

において,杉岡氏は奇数ゼータζ(3),ζ(5),・・・の非明示は

  y’+y^2=−1 → 初等関数y=1/tan(x+C)

  y”+y’^2=−1 → 初等関数y=log(sin(x+C))

  y^(3)+{y^(2)}^2=−1 → 初等関数解なし

  y^(4)+{y^(3)}^2=−1 → 初等関数解なし

  y^(5)+{y^(4)}^2=−1 → 初等関数解なし

  y^(n+1)+{y^(n)}^2=−1 → n≧2のとき,初等関数解なし

との関連性を指摘しています.

  http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page185.htm

においては,さらに偶数ゼータζ(2),ζ(4),・・・の明示が

  y^(n)=(π−x)/2

なる初等関数の存在と関連することを指摘しています.これらの初等関数は簡単に求められますから,すべての偶数ゼータζ(2n)は明示的に求まるというわけです.

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