■空間充填18面体と4軸構造(その8)

 (その7)で調べたことは,切り取り線はわかっているが切削角度がわからないというものであった.たとえば,相手の面に対して垂直になるように削ることにすると,

  P2s=d/√2[1,0,−2]

を通り,C42面に対して垂直な平面は,

  n42・W=d√3/2

  P4e=d/√2[2,0,−1]

を通り,C21面に対して垂直な平面は,

  n21・W=d√3/2

となるが,これも森義彦先生(福島県数学教育協議会)が計算した切削面の法線ベクトル[3,2,1]と異なる方向を向いてしまうのである.[3,2,1]方向はどのように得られたものなのだろうか?

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【1】はみ出し部分の計算(その2)

 はみ出し部分をまったく削らないことにするとその法線ベクトルは

  n21=1/√6[1,2,−1]

最大限削ることにした場合の法線ベクトルは

  Q2・n42=1/√6[2,−1,−1]

であるから,両者の中間をとることにすると

  O2・n21+Q2・n42=1/√6[3,1,−2]

となる.

 この平面は

  P2s=d/√2[1,0,−2]

を通るから,

  1/√6[3,1,−2]・W=7d/2√3・・・・・・・(1)

と表すことができる.

 平面(1)とP4=tA4+B4:

  P4=[t/√3+d/√2,t/√3−d/√2,−t/√3]

の交点を計算すると

  t=d√(3/2)・5/6

 同様に,はみ出し部分をまったく削らないことにするとその法線ベクトルは

  n42=1/√6[1,−2,−1]

最大限削ることにした場合の法線ベクトルは

  R4・n21=1/√6[1,1,−2]

であるから,両者の中間をとることにすると

  O4・n42+R4・n21=1/√6[2,−1,−3]

となる.

 この平面は

  P4e=d/√2[2,0,−1]

を通るから,

  1/√6[2,−1,−3]・W=7d/2√3・・・・・・・(2)

と表すことができる.

 平面(2)とP2=tA2+B2:

  P2=[−t/√3,t/√3+d/√2,t/√3−d/√2]

の交点を計算すると

  t=−d√(3/2)・5/6

 以上のことから

  |t|≦d√(3/2)・5/6

  |s|≦3d√(3/2)/2・7/9=d√(3/2)・7/6

となる.

  P1=[s/√3,s/√3,s/√3]

  P2=[−t/√3,t/√3+d/√2,t/√3−d/√2]

  P3=[t/√3−d/√2,−t/√3,t/√3+d/√2]

  P4=[t/√3+d/√2,t/√3−d/√2,−t/√3]

に,

  ts=−d√(3/2)・5/6,te=d√(3/2)・5/6

  ss=−d√(3/2)・7/6,se=d√(3/2)・7/6

を代入すると

  P1s=d/6√2[−7,−7,−7]

  P1e=d/6√2[7,7,7]

  P2s=d/6√2[5,1,−11]

  P2e=d/6√2[−5,11,−1]

  P3s=d/6√2[−11,5,1]

  P3e=d/6√2[−1,−5,11]

  P4s=d/6√2[1,−11,5]

  P4e=d/6√2[11,1,−5]

ここで,仮にd=30√2とおくと空間充填18面体の頂点の座標が得られる.

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【2】空間充填18面体の計量

 これでねじれ重角錐Cについての計算はほぼ完了で,あとはねじれ重角錐Bの頂点の座標を計算し,重角錐AについてはBの法線ベクトルが[3,2,1]の面を

  |s|≦3d√(3/2)/2・7/9=d√(3/2)・7/6

の周りに回転行列R2-4,Q2-4を使って移してやるだけのことである.以下に計算例をいくつか示す.

[1]ねじれ重角錐B

 2平面(1),(2)は

  1/√6[3,1,−2]・W=7d/2√3・・・・・・・(1)

  1/√6[2,−1,−3]・W=7d/2√3・・・・・・・(2)

で与えられるから,その交線をtA+B=0,A=(a1,a2,a3),B=(b1,b2,b3),A⊥Bとすると

  A=1/√3[1,−1,1]

  B=7d/5√2[1,0,−1]

 この交線は18面体のもうひとつの4軸構造になっている.これとc21面

  1/√6[1,2,−1]・W=√3d/2

の交点は,

  t=−d√(3/2)/10 → d/10√2[13,1,−15]

[2]重角錐A

 たとえば,W=(x,y,z)がP2=tA2+B2を回転対称軸とする−120°回転Q2によって,点d/10√2[13,1,−15]に移ったとすると

  Q2(W−B2)+B2=d/10√2[13,1,−15]

によって,もとの点Wを求めることができる.

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【3】空間充填18面体の木工製作

 中川宏さん製作の木工空間18面体の写真を掲げる.この空間充填18面体は重三角錐Aと2つのねじれ重三角錐B,Cのintersectionとしてできているため,当初は2つの正三角錐とねじれ重三角錐台に3分割して作るしかないと思われた.しかし,実際に作ったものはねじれ重三角錐Cをつくるための開けた穴に埋め木して重三角錐Aの面を削ってある.中川さん苦心の作といえるだろう.

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