■n次元平行多面体数(その11)

【1】球充填格子とルート系

 ところで,このような格子が球充填問題の解を与える.同じ大きさの球を最も密に詰め込む方法は,8次元まではよく知られていて

  A1,A2,D3,D4,D5,E6,E7,E8

である.

 ルート格子Anはn+1個の整数からなり,その和が0であるベクトル(x0,x1,x2,・・・,xn)の集合,Dnはベクトル(x1,x2,・・・,xn)の成分がすべて整数でかつそれらの和が偶数となる格子で,チェス盤を考えればよい.

 E8格子はベクトル(x1,x2,・・・,x8)において,成分がすべて整数であるかすべて半整数であるかであって,それらの総和が偶数.E7格子はE8に含まれるベクトルで,x1+x2+・・・+x8=0を満たすもの.E6格子はE8に含まれるベクトルで,x1+x8=x2+・・・+x7=0を満たすものの集合である.ノルムが2のベクトルで生成される整格子はルート格子An,Dn,En(の直和)である(ヴィットの補題).

n   ルート   格子点間距離           球充填密度

1   A1(Z)   1                1

2   A2    4√(4/3)  =1.075    0.906

3   A3    6√2      =1.122    0.740

4   D4    8√4      =1.189    0.619

5   D5    10√8     =1.231    0.465

6   E6    12√(64/3)=1.290    0.373

7   E7    14√64    =1.346    0.295

8   E8    √2      =1.414    0.254

n   ルート  球充填密度

2   A2   π/2√3=0.906(ラグランジュ1773,ガウス1831)

3   A3   π/3√2=0.740(ガウス1831)

4   D4   π^2/16=0.617(Korkine,Zolotareff,1872)

5   D5   π^2/15√2=0.465(Korkine,Zolotareff,1877)

6   E6   π^3/48√3=0.373(Blichfeldt,1925)

7   E7   π^3/105=0.295(Blichfeldt,1926)

8   E8   π^4/384=0.254(Blichfeldt,1934)

 歴史を振り返ってみると,n<3はガウス(1831年),n=4,5の場合は1870年代にコルキンとゾロタレフ,n=6,7,8は1935年までにブリチェフェルドにより解決された.

===================================