今回のコラムでは,その後の杉岡幹生氏の結果を簡単に紹介したい.とくに【2】は奇数ゼータについての興味深い視点を提供してくれる.詳細はHP
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page181.htm
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page182.htm
を参照されたい.
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【1】フーリエシステムを用いた積分表示
杉岡幹生氏は,その後
Σn^k/{exp(2πn)},k≧0
の積分表示を求めている.
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page181.htm
k=1の場合だけ紹介するが,2πを周期とする周期関数
f(x)=Σncos(nx)/exp(2πn)
に対して
ncos(nx)/exp(2πn)=1/π∫(-π,π)f(x)cos(nx)dx
これを部分積分すると
n/exp(2πn)=1/π∫(-π,π)(Σk^2sin(kx)/{exp(2πk)}sin(nx)/ndx
これを縦に足し合わせると
Σn/exp(2πn)=1/π∫(-π,π)(Σk^2sin(kx)/{exp(2πk)}Σsin(nx)/ndx
ここで,フーリエ級数の公式
Σsin(nx)/n=(π-x)/2
Σsin(kx)/{exp(2πk)}={sin(x)/{cosh(2π)-cos(x)}}/2
とその2回微分
Σsin(kx)/{exp(2πk)}=-sin(x){2-cosh^2(2π)-cosh(2π)cos(x)}}/4{cosh(2π)-cos(x)}^3=g(x)
より
Σk/exp(2πk)=1/π∫(-π,π)g(x)(π-x)/2dx
である.
Σn/{exp(2πn)}=exp(2π)/(exp(2π)-1)^2
であるから,
Σk/exp(2πk)=1/π∫(-π,π)g(x)(π-x)/2dx
はその積分表示になっていることがわかる.
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【2】フーリエシステムと奇数ゼータ
詳細は杉岡氏のHP
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page166.htm
を参照して頂きたいのですが,
ζ(3)=π^2/3log2+4∫(0,π/2)(x-x^2/π)log(sinx)dx
となります.この式はオイラーの計算
ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx
と相同な式ではありますが,異なった積分表示になっていることがわかります.
ζ(3)=1/π∫(0,π)(π^2/6-(x-π)^2/2)log(2sin(x/2))dx
ζ(5)=1/24π∫(0,π)((x-π)^4-2π^2(x-π)^2+7π^4/15)log(2sin(x/2))dx
さらに,杉岡氏は
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page182.htm
において
ζ(2n+1)=∫(0,π)(2n次多項式)log(2sin(x/2))dx
を示して,奇数ゼータが明示的に求めらない理由として,数回微分してlog(2sin(x/2))になる初等関数が存在しないことをあげています.
ところで,リーマン・ゼータ関数の零点分布に関する量がランダム行列を通じてパルンヴェ超越関数で記述されるという予想があり,これにより,ゼータ関数はパンルヴェ微分方程式と深い関係があるといってよいと思われます.→コラム「パンルヴェ微分方程式とモノドロミー群」参照
杉岡幹生氏はすでにHP上にゼータを生成する母関数と微分方程式
y’=±(1−y^2)
の関連について掲げておられます.私はリーマンのゼータ関数やガンマ関数は微分方程式になじまないと思っていたので,このこと自体とても意外な結果でしたが,杉岡氏はさらに奇数ゼータζ(3),ζ(5),・・・の非明示は
y’+y^2=−1 → 初等関数y=1/tan(x+C)
y”+y’^2=−1 → 初等関数y=log(sin(x+C))
y^(3)+{y^(2)}^2=−1 → 初等関数解なし
y^(4)+{y^(3)}^2=−1 → 初等関数解なし
y^(5)+{y^(4)}^2=−1 → 初等関数解なし
y^(n+1)+{y^(n)}^2=−1 → n≧2のとき,初等関数解なし
との関連性を指摘しています.
フェルマーの最終定理でも
x^n+y^n=z^n → n≧3のとき,解なし
でしたが,ゼータ関数の場合は微分方程式で同じ様なことになっているというわけです.
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