■発泡スチロール正多面体

 8月2/3日は嬬恋にある東海大学セミナーハウスで開催された「学生オリンピック」に参加.中学生・高校生(200人くらい)が1週間の合宿でのいろいろな体験を通して知識を得たり深めたりするという趣旨のイベントである.

 東海大学が参加費無料でこの体験学習を開催していて,高校や大学の先生達(100人くらいのスタッフ)がボランティアで指導にあたるというよそではありえない企画には驚かされた.

 数学部門には30人くらいの中学生・高校生が配属され5班に分けられた.1つの班には中学生も高校生も含まれる.数学部門では多面体に関する講義や実習が行われたが,そのテーマのひとつが「発泡スチロールでは正多面体を作ろう」という課題である.

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 必要最小限の知識は事前に与えるがほとんどノーヒントといってよいくらいの予備知識のなかで,綿棒を使って正多面体を組み立て,作り方を考えさせる.そしてオアシス(生け花に用いる吸水素材)で試行させ,まとまったところで発泡スチロールカッタを使用して1辺100ミリの発泡スチロールの立方体から正多面体を切り出す.最後に,正多面体の1辺の長さや表面積,体積などを計算,班毎に発表という課題であった.

 使用した発泡スチロールカッタは正多面体ユニット(中川宏さんと釜石南高校の宮本次郎先生,太田待子さん,田中雅子さん)が開発した切頂・切稜用固定台方式を原型として,東北大学創造工学センター(通称・発明工房の長内譲悦さん,國井誠さん,坂本桂さん)に改良してもらったものである.アルミの固定台以外はすべてホームセンターで入手できる材料からできている.

 製作資金はNPO科学協力学際センター(代表理事・川添良幸)が出資し,秋山仁先生(東海大学・教育開発研究所)に寄贈された.以下,発泡スチロールカッタと固定台,太田待子さんと田中雅子さんによる作品を示すが,発泡スチロールカッタは全部で17台製作されており,これらの正多面体製作キットは解説書付きで将来希望する学校に貸し出されることになっている.

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 若い頭脳たちは見事にその課題を解決することができたのだが,さらに秋山仁先生が提出された1種類の多面体ブロックを使って各種空間充填図形を作るという立体ジグソーパズル問題も短時間で解決したことを申し添えておきたい.

 1種類のブロックを使って,空間を隙間なく埋め尽くすにはどうすればいいだろうか? レンガはそのひとつの答えなのであるが,どんな形のブロックなら空間を埋め尽くせるだろうか? そのようなブロックをすべて決定せよというならばこれは大変な難問である.

 1種類の多面体ブロックを使って各種空間充填図形を作るという問題も決して簡単な問題ではなく,実は指導にあたられた高校や大学の先生達も1時間くらい考えないとわからない問題だったのだが,生徒達のほうがごく短時間で解決にまで至った.余計な予備知識がなく柔軟な頭は空間認識能力が高いということなのだろうか.

 この立体ジグソーパズル問題は秋山仁先生がモスクワとブダペストで発表されたばかりの出来立てほやほやの定理に基づいている.秋山先生はn角の穴をあけるドリルの話もされたのだが,オブサーバ参加のはずの小生にも急遽飛び入り講演する機会が与えられた.

 ハプニングはいろいろあったが,私にとっては普段経験できない中学生・高校生への授業,指導にあたられた先生達との深夜まで続いた懇親会(無論ノンアルコールではない)など思い出に残るセミナーとなった.秋山仁先生,深井実先生をはじめ関係各位に御礼申し上げる次第である.

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