■加減法(その2)

 太平洋戦争の戦時中は,照準器に搭載する関係で,用途限定型のアナログ計算機を必死で作っていたようである.

 戦闘距離が1万−2万メートルにもなると敵艦をみようとしてもよく見えない.それでマストに照準器を配置して目標までの方向と距離と測定するのであるが,パララックス(視差)とタイムラグ(時間差)が出てしまい的中しない.敵艦の移動先を予測して弾を打つために,何らかの計算機が必要になっていたのである.

 未来位置は

[1]sin(α+σ)/sinσ・Δα/Δt=1/T・{sinσ+cos(α+σ)sinα(1−cosδ)}

[2]tan(α+σ)/tanα・Δβ/Δt=1/T・sinδ

[3]R=R1・sin(α+σ)/sinα

の3式を解くことで求められる.簡単にいうと,敵艦の相対分速から自分のベクトルと除去することで,敵艦のベクトルを出すのである.

 日本光学工業(ニコン)では,この3次元の微分方程式を解くための光学式アナログ計算機を作っていたとのことである.その際,使われたのが

  sinA・sinB={cos(A−B)−cos(A+B)}/2

という三角関数の加法定理を応用したかけ算であって,機械式よりレンズ(光学式)のほうが精度がでて,実際,巨艦「武蔵」「大和」に搭載されたとのことである.

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