■星と雪月花(その3)

 同じ大きさの正4面体2個を屋根瓦状に重ねた相貫体には,ケプラーの8角星(星形八面体)という名前がつけられています.この場合,外側に立方体,内側に正八面体ができます.今回のコラムでは互いに双対な正多面体同士,すなわち,立方体と正8面体,正12面体と正20面体の相貫体について紹介したいと思います.

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【1】互いに双対な正多面体の相貫体の木工製作

 双対な2つのプラトン立体をそれぞれの辺が直角に2等分されるように配置します.立方体と正8面体の相貫体は,外側を菱形12面体(直交する対角線の比が1:√2の菱形12面)が,内側には立方8面体(正方形6面+正3角形8面)が入っています.また,正12面体と正20面体の相貫体では,外側を包む立体が菱形30面体(直交する対角線の比が黄金比になっている菱形30面),内側には12・20面体(正5角形12面+正3角形20面)という多面体が内包されているのです.

 すなわち,正多面体とその双対多面体との共通部分(intersection)は,それぞれ立方8面体(6・8面体)と12・20面体であり,また,それぞれ菱形12面体と菱形30面体に内接するというわけです.

 このことから,立方体と正八面体の1辺の長さの比は1:√2,正12面体と正20面体の1辺の長さの比は1:φになることがわかります.また,前者では立方体に貼り付ける外四角錐の底辺に対する二面角は54.7357°,後者では正12面体に貼り付ける外五角錐の底辺に対する二面角は37.3774°と計算されます.

 相貫体の見方を逆にして,正八面体に貼り付ける外三角錐の底辺に対する二面角も54.7357°,正20面体に貼り付ける外三角錐の底辺に対する二面角も37.3774°で同じです.底面や側面が違う形であるにも関わらず,底辺に対する二面角が等しいという調和が取れている・・・このことは決して自明のことではなく,双対関係にある正多面体同士のなせるワザといえるでしょう.

 以下,中川宏さん製作の相貫体の写真を掲げますが,中川さんはケプラーの星形八面体,立方体と正8面体の相貫体,正12面体と正20面体の相貫体,小星形12面体,大星形12面体を「ケプラーの星形多面体」シリーズと呼んでいます.

 なお,ケプラーは,すべての面が合同な菱形である菱形多面体は菱形十二面体と対角線の比が黄金比になっている菱形を30個組み合わせてできる菱形三十面体以外にはないことを証明しようとしたのですが,実はあと2つ,1885年,フェドロフが発見した菱形二十面体と1960年にビリンスキーが発見した菱形十二面体第2種があります.

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【2】双対多面体の入れ子構造

 正多面体の各面の中心(重心)を順に結んで立体を作ると,もとの正多面体と面と頂点の関係が逆向きの正多面体ができます.互いに表と裏の関係にある多面体を双対多面体といいます.正四面体ではふたたび正四面体ができ,正六面体では正八面体が,逆に正八面体では正六面体が,また,正十二面体では正二十面体が,逆に正二十面体では正十二面体ができます.

 したがって,正四面体は自己双対であり,正六面体と正八面体,正十二面体と正二十面体とは互いに双対です.このことにより,正多面体は,{正四面体},{正六面体と正八面体},{正十二面体と正二十面体}の3つのグループに大別することができます.

 3種類の相貫体−−正4面体と正4面体,立方体と正8面体,正12面体と正20面体−−について調べてみると,それぞれの立体の間に双対関係があり,3種類の相貫体の外側にできる立体と内側にできる立体−−立方体と正8面体,菱形12面体と立方8面体,菱形30面体と12・20面体も互いに双対関係をもっていることがわかります.菱形12面体と菱形30面体は内接球をもつのに対して,立方8面体と12・20面体は外接球をもちます.

 そして,これらもやはり相貫体をつくることができ,そしてまたそこに現れてくる外側と内側の立体も双対関係になっています.頂点と面に関しての双対性にはうまくできているなと感嘆させられます.自然界の法則性,自然が作るきれいな関係の1例といえましょう.

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