■楕円積分の加法定理(その2)

 レムニスケートには円に共通する性質があり,定規とコンパスだけで奇数のn等分することができる必要十分条件はnがフェルマー素数(n=22^m+1の形の素数:3,5,17,257,65537)であることです.

 (その1)では倍角公式を取り上げたので,今回は半角公式,すなわち「レムニスケートの弧長を1/2倍にすること」について調べてみることにしましょう.

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【1】円積分の半角公式

  sin2u=2sinucosu=2sinu(1-sin^2u)^1/2=2x(1-x^2)^1/2

より,

  2u=sin^(-1)(2x(1-x^2)^1/2)

したがって,

  2∫(0,x)f(t)dt=∫(0,2x(1-x^2)^1/2)f(t)dt

が成り立ちます.

 あるいは,同じことですが,

  sinu/2={(1-cosu)/2}^1/2

より,

  u/2=sin^(-1){(1-(1-x^2)^1/2)/2}^1/2

したがって,

  1/2∫(0,x)f(t)dt=∫(0,{(1-(1-x^2)^1/2)/2}^1/2)f(t)dt

が成り立ちます.

 2x(1-x^2)^1/2,{(1-(1-x^2)^1/2)/2}^1/2はxから四則演算および平方根により得られますので,この式は定規とコンパスだけで円弧長を1/2倍にする作図が可能であることを示しています.とくに,sinu=1(cosu=0)のとき,sinu/2=1/√2ですから,4半円弧長を定規とコンパスで2等分できることがわかります.

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【2】レムニスケート積分の半角公式

  sl(2u)=2sl(u)sl'(u)/(1+sl^4(u))

  sl'(u)=(1-sl^4(u))^1/2

  sl(u)=2sl(u/2)sl'(u/2)/(1+sl^4(u/2))

  sl'(u/2)=(1-sl^4(u/2))^1/2

  sl(u)=2sl(u/2)(1-sl^4(u/2))^1/2/(1+sl^4(u/2))

 ここで,レムニスケートの4半弧を定規とコンパスで2等分できることを示すためにsl(u/2)=v,sl(u)=1とおくことにします.すると,

  v^8+4v^6+2v^4-4v^2+1=0

  (v^4+1/v^4)+4(v^2-1/v^2)+2=0

 さらにまた,v^2-1/v^2=wとおくと,

  w^2+4w+4=0よりw=-2

より,v=(-1+√2)^1/2

 sl(u/2)=(-1+√2)^1/2も四則演算および平方根により得られますので,円同様,レムニスケートの4半弧も定規とコンパスだけで弧長を1/2倍にする作図が可能であることを示しています.

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