■八元整数(その4)

 八元数:

  a0+a1e1+a2e2+a3e3+a4e4+a5e5+a6e6+a7e7

  ei^2=−1

について補足しておきます.

  [参]一松信「数の世界」丸善

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[1]e1,e2,e4は四元数のi,j,kに対応し,

  a0+a1e1+a2e2+a4e4

が四元数と同じ積を与えると定義する.したがって,この範囲では交換法則は成立しないが,結合法則は成立する.

[2]第4の要素e3を導入し,

  e1e3=e7,e2e3=e5,e3e4=e6

  e3e1=−e7,e3e2=−e5,e4e3=−e6

と定義する.

[3]これにより,eiejekの積により結合法則(eiej)ek=ei(ejek)が成立するのは

  <i,j,k>=<l,l+1,l+3>  (mod7)

  e8=e1,e9=e2,e10=e3,・・・と解釈する

とそれを入れ替えた7・6=42組に限られる.

[4]それ以外の210−42=168組では反結合法則(eiej)ek=−ei(ejek)が成立する.

[5]すなわち,結合法則は一般的には成り立たないが,限られた範囲では成立するのである.

  ξ,ξ^-1の間の積は結合的で,ξ^nは一意に定まる.

  ξ^2η=ξ(ξη),ξη^2=(ξη)η

[6]モウファンの法則(準結合法則)が成り立つ.

  (ξη)(ιξ)=(ξ(ηι))ξ=ξ((ηι)ξ)

  (ξη)ξ=ξ(ηξ)

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 X=R,C,H,Oとして,

  X+iX   (ディクソンの倍加代数)

を構成して,フルヴィッツは十六元数は存在しないことを示した.

 このことを逆に見ると

  R→C:順序関係を捨てる

  C→H:乗法の交換法則を捨てる

  H→O:乗法の結合法則を捨てる

という犠牲が避けられないことが理解される.

 もう捨て去るものは何もなく,四則演算が可能な数体系は八元数で終点なのである.

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