■サイコロの目と幾何分布(その1)

【1】2項分布

 2項分布は1回の実験で2通りの結果のいずれか1つのみが生ずるn回の試行における最も基本的なモデルです.離散分布の解説ではしばしばポリアの壷と呼ばれるモデル(urn model)が用いられますが,ここでは,不良品の含まれたロットで代用することにします.不良率pの製品のロットから,n個の製品を抽出して調べる場合について考えてみましょう.

 1回ずつもとに戻して調べる復元抽出では,取り出した1個の製品について不良品である確率がp,良品である確率がq=1-pですから,x個が不良品(n-x個が良品)になる確率は

p(x)=nCxp^x(1-p)^(n-x)   x=0,1,2,・・・,n

で表されます.

 また,

母平均=np

母分散=npq

より,母分散はつねに母平均より小さくなります.

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【2】負の2項分布(パスカル分布)と幾何分布

 2項分布や超幾何分布では製品の検査個数はあらかじめ決められていましたが,n個の不良品が見つかるまで,1個1個もとに戻して検査を続けたとき,観測した良品の数xの確率分布が負の2項分布です.

p(x)=n+x-1Cxq^xp^n

母平均=nq/p

母分散=nq/p^2

したがって,負の2項分布では,2項分布とは逆に母平均のほうがつねに母分散より小さい値をとります.

 負の2項分布においてn=1の場合,すなわち不良品1個が見つかるまでの検査回数の分布が幾何分布です.

  p(x)=pq^x

 幾何分布は等比数列(幾何数列)的に減少するところから,幾何の名称がついています.すなわち,幾何分布は連続分布における指数分布に相当するもので,無記憶性(no memory property)をもつ離散分布は幾何分布に限られています.

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