■一定の幅をもつ立体?(その5)

 マイスナーが,論文

  Meissner: Drei Gipsmodelle von Flaechen konstanter Breite, Z. Math. Phys. 60(1912),92-94

の中で,定幅曲面の例としてあげているモデルは,

[1]フルヴィッツ・藤原曲線を対称軸の周りで回転させた回転面

[2]ルーローの円弧三角形を対称軸の周りで回転させた回転面

[3]4つの球面と3つのトーラス面よりなる非回転面

の3つである.

 (その1)では[1],(その2)では[2],(その3)(その4)ではn葉曲面を取り上げたのだが,これまでのところ,まったく結論めいたものはでていない.[3]はおそらくルーローの四面体を定幅図形に改良したものと思われるが,今回は[3]について考察してみたい.

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【1】ルーローの四面体の計量

 このシリーズはルーローの四面体の定幅図形からのズレは2.5%もあるということから始まったものである.ここでは,ピタゴラスの定理を使って,1辺の長さ2の正四面体とルーローの四面体を計量してみることにしたい.

 ピタゴラスの定理より正三角形の中線の長さは√3.ある辺の中点とその対辺の中点を結ぶ線は各々の辺に直交するから,中点連結線の長さは√2になる.

 また,ルーローの四面体では頂点を中心とする2つの球面(半径2)の交わりにより稜線ができる.以下,正四面体では辺,ルーローの四面体では稜を用いることにする.

 稜の中点とそれに対応する辺の中点を結び,延長すると対辺の中点に連結する.稜の中点と対辺の中点の距離は,ピタゴラスの定理より√3.したがって,稜の中点とそれに対応する辺の中点の距離は√3−√2.

 ルーローの四面体の対稜の中点間の距離は

  √2+2(√3−√2)=2√3−√2=2.04989>2

それに対して,頂点と対球面の距離は2であるから,2.5%のズレがあることになる.

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【2】ルーローの四面体の切稜

 マイスナーの論文では,ルーローの四面体の6稜のうち,3組の対稜の一方を切稜することが記載されている.3稜が切稜されることになるが,その際,ある頂点Aからでる3稜AB,AC,ADを切稜し,3つのトーラス面とする.しかし,説明はこれだけであり,あとは想像するしかない.

 小生の解釈に間違いがあるかもしれないが,ルーローの四面体の稜ABを切稜する場合,頂点A,Bを通り稜CDの中点を中心とする半径2の円弧を描く.そして,この円弧を辺ABを軸として回転させてトーラス面とすると考えるのが自然な発想であると思う.

  √3−√2=.317837

となっているところを

  2−√3=.267949

で置き換えているから,これで稜が少し丸められる.厳密な定幅立体になっているのかどうか,また,球面とトーラス面の接合線がどのようになるのか調べていないが,2.5%のズレは解消されている.

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