■一定の幅をもつ立体?(その3)

 正方形に内接する円,ルーローの三角形,フルヴィッツ・藤原の三角形は定幅曲線ですが,それのみならず周長が等しい曲線となっています.正方形の内転形は円と同じ周長をもつというわけです.それでは,立方体の内転形は球と同じ表面積をもつでしょうか? 

 宮本次郎先生(釜石南高校)が来仙した折り,表面積や赤道長が球と等しい図形を見せていただきましたが,その図形をn葉曲面と呼ぶことにします.今回のコラムでは,n葉曲面を計量してみることにします.

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【1】球面を平面で近似する

 半径1の球面の赤道をn等分し経線で分割すると,葉っぱ型の曲面が得られる.しかし,この葉状曲面は元来が球面なのだから平らに伸ばすことはできない.

 そこで,葉状曲面を葉状平面で近似し平面に伸ばすことを考える.葉状平面の真ん中を通る中央経線(y=0)の長さが球の経線と同じ長さになるように,正弦曲線

  y=±π/ncosx  (−π/2≦x≦π/2)

  y0=π/n

で近似する.この曲線の赤道(x=0)での幅は2π/nであるから,葉状曲面と等しい.

 2本の正弦曲線で囲まれた部分の面積は

  2∫ydx=4π/n

より,球の表面積の1/nとなる.したがって,n葉の葉状平面の面積は球の表面積と等しくなる.

 また,極(x=±π/2)での接線の交角は

  y’=±π/nsinx

より2π/n,すなわち,n葉で360°をちょうど被覆することもわかるだろう.

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【2】n葉曲面

 この葉状平面をn葉接合した図形(n葉曲面)を考える.葉状平面の中央経線(y=0)の長さは球の経線の長さπと等しいが,正弦曲線の弧長は楕円積分で表され,辺縁部ほどπからずれてひずみが増大する.

 n葉曲面の接合線を空間座標(ξ,η,ζ)で表すことを考える.極方向から投影すると,接合線は直線にみえることから,

  η=y0cosx,y0=π/n

  ζ=η/y0=cosx

 また,中央経線(y=0)の長さは球の経線と等しいことから,ξは微分方程式

  1+(dζ/dξ)^2=(dx/dξ)^2

の解として与えられる.

  dζ/dξ=sinx → dξ/dx=cosx

を解くと

  ξ=sinx

 以上より,n葉曲面の接合線はxを助変数として

  ξ=sinx

  η=π/ncosx

  ζ=cosx

で表されることがわかる.このことから,n葉曲面の中央経線(η=0)は円となることも理解されるであろう.

 また,n葉曲面の赤道に平行な断面は1辺の長さが2ηの正n角形となるから断面積はnηζ,したがって,体積は

  V=2n∫ηζdξ=2n∫(0,π/2)ηζcosxdx

   =2π∫(0,π/2)(cosx)^3dx=4π/3

となる・・・?

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【3】雑感

 体積4π/3は球と等しい,したがって,n葉曲面は表面積,赤道長のみならず体積も球と等しい図形ということになるが,この結論は明らかにおかしい.

 「等周不等式

  2次元 → L^2≧4πA

  3次元 → S^3≧36πV^2

  n次元 → n次元表面積^n≧n次元体積^(n-1)n^nπ^(n/2)/Γ(n/2+1)

等号は円,球,超球のときに限る」

の反例になるからである.私の場合,計算力が鈍っているため,信頼率は50%以下と思われる.後日,再考し訂正しておきたい.

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