■乙部融朗遺稿集(その17)

 4次元a−b柱に限らず,乙部先生が高次元図形のおもしろい性質をたくさん発見されていることは事実である.また,間違いもあるかもしれないが,多くの人の目に留まることによりそのチェックには役立つので,その意味でも発刊する意義は大きいと考えられる.

 わたしはこの本の発刊の意義を最も強く感じているのであるが,乙部先生はご自分で構築された理論をご自分で作られた用語で書かれていらっしゃるため、多くの人にとって読むのが非常に難解で、高次元図形に馴れたひとが見ても何が書いてあるのかさっぱりわからなかったという話もあるほどである.

 すでに解読は完了しているので,乙部先生独自の用語と一般的な用語の対訳を付ける等,わたしの解釈やコメントを追記して他の研究者の方々が理解しやすい形にすることもできるのではないかと考えている.

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 乙部先生の原稿は(ミスプリと思われる数か所を除き)計算値はあっている.これは驚異的であるといえる.もっと驚いたことに大域的な幾何学のほかに局所幾何学の計算も私が行ったものと同じ数値であった.

 私なりに解釈すると,石井先生のは大域幾何学的,乙部先生のは局所幾何学から大域幾何学を構成するという手法の違いがみられる.そのため,乙部先生は針金模型を作りやすかったはずである.私にはそれが両方見通せるために簡単に解読することができた.

 a-b柱は彼のオリジナルであろう.実際,5次元図形の頂点図形を求めたときa-b柱が出現した.用語については難解ではないと思っている.先日結晶学会で発表した経験があるが,数学と結晶学とでは同じことを指すのに用語は異なるので,自分に領域のことばに直して理解しなければならない.それは当たり前のことである.理解できないのは,言葉の違いにびっくりして理解できないというのではなく,思考自体が理解できないということなのであろう.

 乙部先生の4次図形構成法で私の理解を超えているとことがあるのだが,あの方法では5次元図形をアタックすることはできないとも思っている.もし必要としていただけるのなら,乙部先生の思考法をまとめた講演をやるのはいいかもしれない.いずれ機会があったらそうするつもりである.

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