パズルワールド散策(その13)

 今回のコラムでも数列の次の項を予想するという数列のパズルを取り上げてみます.

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【1】ポリオミノ数

 ポリオミノの一般項に対しても公式は知られていない.回転や反転で同型になるものは同じと数えると,モノミノ(1),ドミノ(1),トロミノ(2),テトロミノ(5),ペントミノ(12),ヘキソミノ(35),ヘプトミノ(108),オクトミノ(369),・・・.別に数えると,モノミノ(1),ドミノ(2),トロミノ(6),テトロミノ(19),ペントミノ(63),ヘキソミノ(216),ヘプトミノ(760),オクトミノ(2725),・・・

 nオミノの種類はnとともに急速に増加する.前者の個数をPn,後者の個数をQnと表すと

n    Pn     Qn     n    Pn     Qn     

1 1 1 10 4655 36446

2 1 2 11 17073 135268

3 2 6 12 63600 505861

4 5 19 13 238591 1903890

5 12 63 14 901971 7204874

6 35 216 15 3426576 27394666

7 108 760 16 13079255 104592937

8 369 2725 17 50107911 400795860

9 1285 9910 18 192622052 1540820542

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【2】立体ポリオミノ数

 ポリオミノの正方形を立方体に置き換えた立体ポリオミノでは,回転や反転で同型になるものは同じと数えると,モノミノ(1),ドミノ(1),トロミノ(2),テトロミノ(8),ペントミノ(29),ヘキソミノ(166),ヘプトミノ(1023),・・・.別に数えると,モノミノ(1),ドミノ(3),トロミノ(15),テトロミノ(93),ペントミノ(639),ヘキソミノ(4653),ヘプトミノ(35169),・・・

n    Pn     Qn     

1 1 1

2 1 3

3 2 15

4 8 93

5 29 639

6 166 4653

7 1023 35169

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【3】格子の第n近接数

 1次元格子(A1),三角格子(A2=G2),正方格子(D2=B2),単純立方格子(sc),体心立方格子(bcc),面心立方格子(fcc:A3=D3)の見取り図を描いて,第n近接の個数を数えてみると

         第1近接,第2近接,第3近接,第4近接,・・・

  1次元格子 :2,2,2,2,2,2,・・・

  三角格子  :6,6,6,12,6,18,・・・

  正方格子  :4,4,4,8,4,4,・・・

  単純立方格子:6,12,8,6,24,24,・・・

  体心立方格子:8,6,12,24,8,6,・・・

  面心立方格子:12,6,16,12,24,8,・・・

が得られます.

 この他の2次元格子では六角格子(ハニカム格子)やカゴメ格子,3次元格子ではダイヤモンド格子などについて数え上げてみるのも面白いのですが,このような単純素朴な方法では4次元のD4格子についての結果は得られません.

 D4格子(=F4格子)は4次元の体心立方格子であり,正24胞体による4次元空間の充填形に相当するものです.ここで,σ0(n)をnの奇数の約数の和と定義します.そうすればD4格子では原点からのノルムがnである点の個数が

  24σ0(n)

で与えられるのですが,

  n=1 → 24・1=24個

  n=2 → 24・1=24個

  n=3 → 24・(1+3)=96個

  n=4 → 24・1=24個

  n=5 → 24・(1+5)=144個

  n=6 → 24・(1+3)=96個

  n=7 → 24・(1+7)=192個

  n=8 → 24・1=24個

  n=9 → 24・(1+3+9)=312個

  n=10 → 24・(1+5)=144個

 さらに,D4格子の各格子点の勢力範囲が1/2であることを使うと

  Σ1/n^2=π^2/6

を証明できます.同様に,例外型リー環に属する8次元のE8格子では

  240σ3(n)

であり,勢力域の体積が1/16であることから

  Σ1/n^4=π^4/90

を得ることができます.

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 また,8次元空間内で隣り合う2点間の距離がすべて1の格子では原点に隣接する点は240個あり,それらと原点を結ぶベクトルが例外型リー環のE8ルート系を表すので,この格子をE8格子といいます.

 そして,8次元空間において,2個の正軸体(正8面体の拡張)と1個の正単体(正4面体の拡張)を組み合わせると空間充填形ができるのですが,E8はA8とD8両方を含んでいるというわけです.

 なお,E8格子において,原点からの距離が√nである格子点の個数は

  240σ3(n)

(ここで,σ3(n)はnの約数の3乗の和)と表せることが知られています.すなわち,

  n=1(1^1,0^7)(1/2^4,0^4) → 240・1^3=240個

  n=2(1^2,0^6)(1/2^4,1^1,0^3)(1/2^8) → 240・(1^3+2^3)=2160個

  n=3 → 240・(1^3+3^3)=6720個

  n=4 → 240・(1^3+2^3+4^3)=17520個

  n=5 → 240・(1^3+5^3)=30240個

  [参]コラム「球の充填と格子(その2)」

     コラム「因数分解の算法(その19)」

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