■4次元の雪と1.26次元の雪

 構築模型の例として,雪がなぜ六角形をしているのだろうかという問題を考えてみよう.六花という異名をもつ雪では,水分子の結晶構造が六角を基本とするからこれがひとつの内因になっていることは間違いない.しかし,この六角形の基本単位を次々につけ足していったときに全体として六角形になるとは限らない.四角形にも不定形にもなり得るので他に理由を求めなければならないのだが,雪が六角形をとるという「形の物理学」の答えは完全には与えられていないのである.

  [参]小林禎作「雪ななぜ六角か」筑摩書房

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【1】4次元の雪

 六角形の内角は120°であるが,これは辺と辺がなす角度である.したがって,4次元の六角形は面と面のなす角度が120°である立体であると考えることができる.

 六角柱は面と面のなす角度が120°であるが,すべての二面角が120°をなすわけではない.すべての二面角が120°をなす立体に「菱形12面体」がある.これは対角線の長さの比が1:√2の菱形12枚からなる多面体である.

 菱形12面体をはじめて発見したのはケプラーであるが,ケプラーは「菱形12面体」と称した.すべての二面角が120°をなすというのがその所以であろう.

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【2】1.26次元の雪

 幾何学では分数次元を想像することも可能であるが,中でも有名なのは「コッホ雪片」である.コッホ雪片ではまず1辺の長さ1の正三角形を描く.それぞれの辺を3等分し,真ん中の部分を取り除く.そこに同じ長さの辺でできた正三角形を置く.この操作を何回も繰り返すと,雪の結晶のような形になる.

 周長は1回の操作ごとに1/3ずつ増えるので,n回後の長さは(4/3)^n→∞である.

 この曲線は1次元の線ではない.また,同時に2次元でもない.そこで,このような曲線はフラクタル次元をもつといわれ,その次元は

  log4/log3=1.26

で,線の次元よりは上だが,面の次元よりは下になる.

 また,無限に繰り返した結果できるフラクタル図形の面積は

  S=√3/4+√3/4・(1/3)^2・3+√3/4・(1/9)^2・3・4+√3/4・(1/27)^2・3・4・4+・・・=√3/4+√3/12/(1−4/9)=√3/4+3√3/20=2√3/5である.つまり,無限の周囲が有限の面積を囲んでいることになる.

 方眼紙を1枚もってきてこの図形にかぶせ,この図形を覆っているマス目の個数を数える.つぎにマス目の大きさを半分にした方眼紙で同じことを繰り返す.もとの図形が線であればマス目の数は2=2^1倍に,面であればマス目の数は4=2^2倍に増える.

 コッホ曲線では,マス目の大きさを1/3にした方眼紙で同じことを繰り返すと画素数は4倍になるから,

  3^d=4→d=log4/log3=1.26

マス目の大きさを半分にした方眼紙であれば,2^1.26倍に増えるのである.

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