■連続回転する多面体の輪(その2)

 パウル・シャッツ立体(1/18立方体)のように,細長くかつ平たい四面体では6個(鏡像体を3個ずつ交互に)をつなくだけで連続的に回転することができる.

 鼈臑(べつどう,1/6立方体)を6個つないだ場合は連続回転できないが,8個つなぐと連続回転が可能になる.ただし,実際に動かしてみると遊びがあり,同じ角度でも取り得る形はひとつに決まらない.

 それに対して,6個のパウル・シャッツ立体からなる環は常にタイトで,角度を決めれば形が一通りに定まる1自由度の系である.パウル・シャッツ環の秀逸さを示すものである.

 それでは正四面体や工藤の四面体,立方体同士をつないだ環ではどうだろうか? 中川宏さんに検討してもらうことになった.

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【1】回転する正四面体の環

 同じ大きさの正四面体を互いに1つの頂点の周りに集めるとき,1点に最大何個の正四面体を集めることができるだろうか? 少なくとも20個集めることは可能である.しかもこのことは直観的にイメージすることができる.正20面体を思い出してほしい.正20面体の面はすべて正三角形なので中心と頂点を結べば20個の四面体が得られることになる.また,球面三角法より20≦n≦22が得られるが,正解はn=20と予想されている.

 それでは,1つの稜の周りに最大何個の正四面体を集めることができるだろうか? 正四面体の二面角は約70°であるから,1稜のまわりに正四面体を6個集めることは不可能である.5個が正解となる.

 次に,平面上の1点の回りに最大何個の正四面体を置くことができるだろうか? 正四面体の面の内角は60°であるから,6個が平面上の1点に会することができる.その際,正四面体の平面上にない稜同士は離れていてつなぐことはできないが,平面上に置くのでないとしたら中心のほぼ1点に会するようにして,合同な正四面体6個の相対する辺をテープで貼り付けて環にすることができる.しかし,この環はわずしか動かすことができない.また,7個ではうまくかみ合わない.

 それに対して,8個以上の正四面体を偶数個,稜同士を蝶番でつないでできる環は,内と外が入れ替わりあうように連続的に回転することができる.ただし,8個の正四面体の環であっても動きに若干の遊びがあるようである.

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【2】回転する工藤の四面体の環

 正四面体と違って,工藤の四面体8個からなる環は常にタイトに連続回転することができる.すなわち,パウル・シャッツ環同様,角度を決めれば形が一通りに定まる1自由度の系である.

 もしn角形(n>3)の各頂点にハトメがついているとしたら,その多角形は容易に変形する.それに対して三角形は実に頑丈で安定している.多角形は筋交いを入れて三角形に分割する補強をしないと堅牢な構造にはならないから,8個の四面体をつないだ環は1自由度系にならないと考えていたのだが,どうも誤解のようである.

 パウル・シャッツ立体は空間充填三角錐でかつその展開図が平行六辺形,工藤の四面体も空間充填三角錐でかつその展開図が三角形である.パウル・シャッツ環のように中央に大きな穴はあかないが,拡がってはすぼまるおもしろい動きに注目されたい.

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【3】立方体の環

 立方体は6個でも8個でも連続回転することはできず,隣の面と入れ替わるところまでしか動かなかった(△←→▽,□←→◇).正四面体,工藤の四面体,鼈臑,パウル・シャッツ立体では対辺が直交するが,立方体の対辺は平行である.おそらくこのことによって連続回転できないのだろう.

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