■ボロノイ細胞と平行多面体(その22)

 空間充填三角錐でかつその展開図が平面充填図形となっている立体としては,

[1]v=3:工藤の三角錐(二等辺三角形)

[2]v=4:工藤の三角錐(平行四辺形)

[3]v=5:中村の三角錐(平行六辺形を2等分した五角形)

[4]v=6:鼈臑(平行六辺形)

があげられる.

 中川宏さんはすでに工藤の三角錐と鼈臑(べつどう)を木工製作されているが,今回のコラムでは新たに中村義作先生のダブル充填三角錐の製作をお願いした.

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【1】ダブル充填三角錐の木工製作

 四面体は木工製作上最も作りにくいものである.しかも,工藤の三角錐の二面角は60°,90°,鼈臑の二面角は45°,60°,90°.それに対して,中村の三角錐の二面角は

  38.1109°,51.8892°,60°

  66.9084°,90°,113.092°

であるから,工藤の三角錐や鼈臑と比べても手強かったかもしれない.

 中川宏さんは中村の三角錐に90°の二面角があることを利用して,正三角柱から中村の三角錐2個分の四角錐を切り出し,それを半分にして中村の三角錐を作られた.以下の写真は鼈臑(左),中村の三角錐(中),工藤の三角錐(右)の順に並べたものである.

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【2】三角錐→三角柱・平行六面体への積みあげ

 工藤の三角錐は3個で三角柱,6個で平行六面体を,8個で自己相似すなわち同じ形で2倍(体積は8倍)の一回り大きい四面体になる.鼈臑(1/6立方体)も3個で三角柱をなす.

 1/12立方体や1/24立方体の展開図は平面充填図形ではないが,これらも空間充填三角錐である.1/12立方体と1/24立方体は6個で三角柱,6個で平行六面体,8個で自己相似の四面体になる.

 8個で自己相似の四面体になるとはいっても,工藤の三角錐と1/12立方体と1/24立方体ではそれぞれ組み立て方が異なっている.

 また,6個で平行六面体になることは三角形の辺を中心として三角形の鏡像を貼り付けていくと,6個目の鏡像で最初の三角形を平行移動させたものが登場することと深く関係していると思われる.

 工藤の三角錐は2/24立方体で鏡像体をもたない単独空間充填図形であるが,鼈臑と中村の三角錐には鏡像体があり,これらは左右の鏡像体の対で空間充填可能となる.それでは何個(何対)積み重ねると三角柱になるのだろうか? また,この三角柱を垂直に切った断面は正三角形になるのだろうか?

 以下の写真のように,中村の三角錐6個(3対)で断面が正三角形の斜三角柱になることがおわかり頂けるであろう.

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