■パズルワールド散策(その9)

 今回のコラムでも平面図形の分割を取り上げることにした.まず,三角形分割の問題から始めることにする.

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 任意の三角形の3辺の中点を結ぶと,もとの三角形は合同な4つの三角形に分割される.新たに生じた三角形はもとの三角形と相似(相似比1:2)である.このように任意の三角形は自分自身と相似な4個の三角形に分けることができる.

 新たに生じる三角形同士は合同である必要はないとして,n個の自分自身と相似な三角形に分割する問題は,n=4またはn≧6ならば可能であることが知られている.n=2,n=3の場合は直角三角形のみがそのように分割可能である.

[Q1]n=5,すなわち,5つの相似三角形に分割できる三角形は何か?

[A1]直角三角形は自分自身と相似な5個の三角形に分割できるが,それ以外に内角30°,30°,120°の二等辺三角形が可能である.5つの相似三角形に分割できる三角形はこの2種類のみであることが証明されている.

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[Q2]正方形を(同じ大きさでなくてもよい)n個の小正方形に分割できるようなnは何か?

[A2]n=2,3,5以外のすべてのn個の小正方形に分割できる.

 正方形の場合,n≧6ならばすべてのn個の小正方形に分割できる.立方体の場合はn≧48のとき小立方体に分解できると予想されている.また,正方形を大きさがすべて異なる小正方形に分割する問題の最小位数は21である.

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 ピラミッドの石を積み上げる工事など,重い物を移動させるとき,下にコロ(丸太)を並べて転がす.この場合,切り口が円であることが重要ではなく,平行線で挟んだときの幅が一定であることが本質的である.

 いかなる方向に関しても等しい幅をもっている図形を「定幅図形」と呼ぶが,平面における定幅図形は円だけではなく,そのような形状は(意外にも)無数にある.

 たとえば,正三角形の3つの頂点を中心にして正三角形の1辺の長さを半径とする円を描くと,正三角形に少し丸みをつけた図形ができる.これがルーローの三角形である.ルーローの三角形はどの方向の幅も最初の正三角形の1辺の長さとなり,転がるときに最高点を同じ高さに保つ(中心の高さは一定ではない).

 また,円は三角形の中を常に3辺に接しながら回転することができるが,正3角形に内接しながら回転することできる凸閉曲線は円以外にも存在する.

 このような図形の一例が,正三角形の中線を一辺とする正三角形の頂点を中心として,中線の長さを半径とする2個の円弧からなる曲線(藤原・掛谷の2角形)である.この性質をもつ曲線の中で囲む面積が最小のものは,藤原・掛谷の2角形であることが証明されている.

[Q3]円周を2等分する弦は円の面積をも2等分する.それでは,周囲を2等分する弦が面積も2等分するような曲線は円以外にも存在するか?

[A3]この性質も円に固有のものではなく,同じ性質をもつ中心対称でない曲線が知られている.

 丸太を水に浮かべたとき,どんな向きにでも安定して浮くことができる曲線は何かというのがウラムの問題である.Q3は密度ρ=1/2の丸太を水に浮かべたとき,どんな向きにでも安定して浮くことができる曲線を求めよという問題と等価である.アウエルバッハは断面が非凸なハート型曲線と凸ではあるが円形ではない三角おむすび型曲線の例を示した.ρ≠1/2のときはいまだ何の結果も得られていない.

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