■判別式(その20)

【1】カルダノ変換=平行移動

 2次方程式:

  ax^2+bx+c=0

の根の公式:

  x=(−b±√D)/2a,D=b^2−4ac

は紀元前二千年頃のバビロニアで求められています.

 Dは2次方程式の判別式ですが,

  ax^2+bx+c=a{(x+b/2a)^2−D/4a^2}

ここで,x+b/2a=u,D/4a^2=v^2とおいて,完全平方式=定数という形の方程式を作り,

  u^2−v^2=(u+v)(u−v)

を適用して上記の根の公式を得ているというわけです.

 すなわち,

  x+b/2a=u

では2根の平均が0になるように平行移動したということができる.

 3次方程式:

  ax^3+bx^2+cx+d=0

の場合は,2次方程式のようにな完全立方式=定数の形にすることは難しそうですが,x^2の項の係数はx’=x+b/3aと変数変換(カルダノ変換)することによって簡単に消すことができます.

  ax^3+bx^2+cx+d=a{(x+b/3a)^3+p(x+b/3a)+q}

ここで,

  p=(3ac−b^2)/3a^2,

  q=(2b^3−9abc+27a^2)/27a^3,

  u=x+b/3a

とおけば,

  u^3+pu+q=0

となり,uについては2次の項がなく,3次,1次,定数項が残りますから,因数分解の公式

  a^3+b^3+c^3−3abc

 =(a+b+c)(a^2+b^2+c^2−ab−bc−ca)

 =(a+b+c)(a+bω+cω^2)(a+bω^2+cω)

が使えそうです.

  x’=x+b/3a

では2根の平均が0になるように平行移動(あるいは立方完成)したということができる.

 引き続いて,4次方程式:

  ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0

では,x=u−b/4aとおいて,4根の平均が0になるように平行移動する.

  u^4+pu^2+qu+r=0

  p=(8ac−3b^2)/8a^2

  q=(b^3−4abc+8a^2d)/8a^3

  r=(−3b^4+16ab^2c−64a^2bc+256a^3e)/256a^4

というように3次の項を欠いたuに関する4次方程式が得られます.カルダノ変換によって,まず3次の項を消すのです.

 一般に,n次方程式:

  anx^n+an-1x^(n-1)+・・・+ a1x+a0=0

に対してx’=x+an-1 /nan と変換(カルダノ変換)するとx^(n-1)の項が0である方程式に還元できます.3次方程式では2次の項,4次方程式では3次の項を欠いた方程式に変形しましたが,ではもっと低次の項の係数を0にできないか?と考えるのは自然な発想でしょう.

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