■判別式(その19)

【1】有理曲線

 曲線上の有理点全体を1つの変数の有理式として表すことのできる曲線を有理曲線といいます.楕円曲線は有理曲線でないことが知られています.

(2次曲線)

 原点を中心とする半径1の円:x^2+y^2=1の円周上のひとつの有理点が(0,1)です.この点を通る直線y=mx+1と単位円との交点は,代入して因数分解すれば

x^2+(mx+1)^2=1

x((1+m^2)x+2m)=0

より

x=(2m)/(1+m^2),y=mx+1=(1−m^2)/(1+m^2)

と表すことができます.これによって,円周上の点(x,y)が有理点であるためには,mが有理数であることが必要十分条件であることがわかります.すなわち,単位円上のすべての有理点は,mの関数

x=(2m)/(1+m^2),y=±(1−m^2)/(1+m^2)

で表すことができます.

 x^2+y^2=2(半径√2の円)において(1,1)は有理点で,この点を通る直線の方程式

y−1=m(x−1)を(x^2−1)+(y^2−1)=0に代入して因数分解すると

x=(m^2−2m−1)/(m^2+1)

y=(−m^2−2m+1)/(m^2+1)

が得られます.m=∞に対応する(1,−1)も有理点です.

 このように,円の有理点全体は1つの変数mによって一意化できますが,円ばかりではなく,現在では2次曲線に1つでも有理点があると実は無限に有理点があることがわかっています.2次曲線は有理点を無限のもつか,1つももたないかのどちらかであって,たとえば,x^2+y^2=3(半径√3の円)の上には有理点は1つも存在しません.このことは,互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れないということからわかります.

(3次曲線)

 デカルトの正葉線:x^3−3axy+y^3=0(a>0)

はx+y+a=0を漸近線とする3次曲線ですが,原点(0,0)が有理点ですから,y=mxとおくことによってパラメータ表示の形に書くことができます.

x=3am/(1+m^3),y=3am^2/(1+m3 )

 この3次曲線は重根をもち,原点(0,0)が特異点になります.そのため,この曲線上のすべての有理点を,このようにパラメトライズすることができました.一般に,f(x,y)=0が3次式のとき,その曲線上に特異点と呼ばれる点が存在するかどうかで,曲線のもつ性質が大きく異なってきます.ワイエルシュトラス形式の特異点は有理点であり,曲線上に特異点があれば,適当なパラメータmによりx,yはmの多項式として表されます.そして,xとyがmの有理式として表されるとき,有理曲線となり,2次曲線とよく似た性質をもちます.

(楕円曲線の場合)

 一方,特異点がなければ,楕円曲線と呼ばれる非有理曲線で2次曲線とは本質的に異なってきます.2次曲線はすべて有理曲線ですが,3次曲線が異なる3根をもつ有理係数の多項式の場合は,有理勾配の方法によるパラメトライズは有効には働きません.すなわち,楕円曲線は有理曲線でないため有理関数で表わすことはできませんが,楕円関数でパラメトライズすることは可能です.

 とはいっても,楕円曲線上に有理点が無限個のっていたり,有限個であったり,あるい全くなかったりすることは図をいくらにらんでもわからない問題です.少し挑戦してみると分かるのですが,これらを証明するのはほとんど不可能に見えるほど難しい問題です.また,a^p+b^p=c^pを満たすような楕円曲線:

  y^2=x(x+a^p)(x−b^p)

が保型関数によってパラメトライズできないことの証明がフェルマーの最終定理の証明に繋がるのですが,これ以上はかなりこみいった話になるので追求しないでおきましょう.(楕円曲線の有理点の有無ではなく,楕円曲線そのものが存在しないことを示すのである.)

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