■整数の積(その13)

【1】ミンコフスキーの不等式(正定値n元2次形式の最小値の上界)

 ミンコフスキーもn元2次形式を考え,与えられた判別式をもつn元2次形式の最小値に対する上界Mが

  M<An|A|^1/n   (An=4(Γ(n/2+1))^2/n/π)

で与えられることを証明しました.この結果はエルミートのものより精密です.

 ガンマ関数の漸近表示を用いれば

  M<2n√nπe^1/3n/πe・|A|^1/n〜0.234n√nπe^1/3n・|A|^1/n

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【2】一般の格子に対するミンコフスキーの格子点定理

 n本のベクトルで張られる平行2n面体の体積

  {λ1x1+λ2x2+・・・+λnxn:0≦λi≦1}

について述べておきます.

 写像:y=Axによって,単位直方体は平行2n面体に写像されるものとすると,この写像のヤコビアンはJ=|A|となります.また,グラミアン

  G=|A|^2

が成立しますから,平行2n面体のn次元体積は

  |G|^(1/2)=|A|

で与えられます.

 したがって,Λを体積Δをもつ格子とすると

ミンコフスキーの定理から,

  (中心対称凸体の体積)>2^nΔ

ならば,内部あるいは境界上に格子点が必ず存在することになります.

 単位球の体積:B^n=π^n/2/Γ(n/2+1),x1^2+・・・+xn^2≦λ^2の体積はλ^nB^nですから,与えられた判別式をもつn元2次形式の最小値に対する上界Mが

  M<An|A|^1/n   (An=4(Γ(n/2+1))^2/n/π)

で与えられることが証明されます.この結果はエルミートのものより精密です.

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