■n角の穴をあけるドリル(その46)

 本シリーズが始まった頃,正n角形の内転形について小生が知っていることといえば

(1)n=4→ルーローの三角形

(2)n=6,8,10,・・・→ルーローの五角形,七角形,九角形,・・・

(3)n=3→藤原・掛谷の二角形

(4)n=5,7,9,・・・→知られていない

だけであった.

 その後,n=3については,藤原・掛谷の二角形以前にルーローの二角形が考案されていることがわかった.

(3)n=3→ルーローの二角形,藤原・掛谷の二角形

 n=5,7,9,・・・については,当初,ルーローの偶数角形が内転形になり,ルーローの奇数角形の円弧の中心がn−1角形の頂点にあるならば偶数角形ではn−1角形の辺の中点にあることは双対性のなせる美しい結果であると思いこんでいた.ところが,ルーローの偶数角形が内転形であるということこと,また,そうあるべきだという小生の希望は打ち砕かれた.

(4)n=5,7,9,・・・ルーローの四角形,六角形,八角形(擬内転形)

 しかしながら,ルーローの偶数角形は内転形に極めて近い形であり,その誤差は1%もないことは確かであることから,何らかの客観的な規準でルーローの偶数角形の円弧の中心や曲率半径が決定されているものと思われる.たとえば,コラム「デルトイドの幾何学(その10)」で掲げたような面積最小の内転形であるとか,何か極値問題の解になっていると思われるのだが,その後の検討でもうまいものがみつからないままである.

 掛谷は卵形線に関する最大最小問題を考えるとき,それらの問題に多くは与えられた条件の複雑さのために,普通の変分学の手段では解き得ないことを指摘しているが,まさにそのような状況にあるのだろう.

 n=5,7,9,・・・については,擬内転形だけで内転形が存在しないというのではない.円弧であるという条件を外せばフルヴィッツ・藤原曲線,すなわち,接線極座標表示で

  p(θ)=a+bsin(n−1)θ

  a≧{(n−1)^2−1}b

が,n=4,6,8,・・・に対しても,n=3に対しても,n=5,7,9,・・・に対しても内転形になる.その際,正n角形の内部でフルヴィッツ・藤原曲線の中心が円軌道を描くことは,数学者が見落とした重要な結果である.

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【まとめ】

(1)n=4→ルーローの三角形,フルヴィッツ・藤原の三角形

(2)n=6,8,10,・・・→ルーローの五角形,七角形,九角形,・・・,フルヴィッツ・藤原の五角形,七角形,九角形,・・・

(3)n=3→ルーローの二角形,藤原・掛谷の二角形,フルヴィッツ・藤原の二角形

(4)n=5,7,9,・・・→フルヴィッツ・藤原の四角形,六角形,八角形,・・・(内転形),ルーローの四角形,六角形,八角形(擬内転形)

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