■n角の穴をあけるドリル(その41)

 高さhの正三角形の内心を中心とする半径h/3の円は,正三角形に内接します.この円は頂角180°,頂点間距離2h/3の円弧二角形と考えることもできます.正三角形に内接しながら回転することができる図形には,自明な内接円の場合も含めて

  円・・・・・・・・・・・半径h/3(頂角180°,頂点間距離2h/3)

  ルーローの二角形・・・・半径h/2(頂角120°,頂点間距離√3h/2)

  藤原・掛谷の二角形・・・半径h  (頂角60° ,頂点間距離h)

などがあります.正三角形の内接円もルーローの二角形も藤原・掛谷の二角形もその周長は2πh/3で等しくなります.

 このシリーズが始まったとき,私にとって藤原・掛谷の二角形は既知のものでしたが,ルーローの二角形のことはまったく知りませんでした.私にとって未知というよりは誰も知らない,つまり,ルーローの二角形は忘れ去られた図形であったのだと思われます.今回のコラムでは「藤原・掛谷の二角形」「ルーローの二角形」が正三角形の内転形であることを証明してみます.

===================================

【1】藤原・掛谷の二角形

(1)0≦θ≦π/6のとき

  円弧の中心(0,h),半径h

 → p(θ)=h−hcosθ,p(0)=p’(0)=0

(2)π/6≦θ≦5π/6のとき

  円弧の中心(h/2,h−h√3/2),半径0

 → p(θ)=−h(1−√3/2)cosθ+h/2sinθ

(3)5π/6≦θ≦7π/6のとき

  円弧の中心(0,h−h√3)),半径h

 → p(θ)=h−h(1−√3)cosθ

(4)7π/6≦θ≦11π/6のとき

  円弧の中心(−h/2,h−h√3/2),半径0

 → p(θ)=−h(1−√3/2)cosθ−h/2sinθ

(5)11π/6≦θ≦2πのとき

  円弧の中心(0,h),半径h

 → p(θ)=h−hcosθ

===================================

【2】内転形であることの証明

 ここでは,ω=2π/3とおいて

  p(θ)+p(θ+ω)+p(θ+2ω)=h(一定)

となることを示してみます.

 とはいうものの,ルーローの三角形ではπ/3毎に等分されていましたから計算は楽でしたが,藤原・掛谷の二角形では面倒になることは避けられません.しかし,0≦θ≦2πの範囲すべてを検証する必要はなく,実際は0≦θ≦ω=2π/3の範囲で済みます.

(1)0≦θ≦π/6のとき,2π/3≦θ+ω≦5π/6,4π/3≦θ+2ω≦3π/2

 → p(θ)=h−hcosθ

 → p(θ+ω)−h(1−√3/2)cos(θ+ω)+h/2sin(θ+ω)

 → p(θ+2ω)=−h(1−√3/2)cos(θ+2ω)−h/2sin(θ+2ω)

  p(θ)+p(θ+ω)+p(θ+2ω)=h

(2)π/6≦θ≦π/2のとき,5π/6≦θ+ω≦7π/6,3π/2≦θ+2ω≦11π/6

 → p(θ)=−h(1−√3/2)cosθ+h/2sinθ

 → p(θ+ω)=h−h(1−√3)cos(θ+ω)

 → p(θ+2ω)=−h(1−√3/2)cos(θ+2ω)−h/2sin(θ+2ω)

  p(θ)+p(θ+ω)+p(θ+2ω)=h

(3)π/2≦θ≦3π/2のとき,7π/6≦θ+ω≦4π/3,11π/6≦θ+2ω≦2π

 → p(θ)=−h(1−√3/2)cosθ+h/2sinθ

 → p(θ+ω)=−h(1−√3/2)cos(θ+ω)−h/2sin(θ+ω)

 → p(θ+2ω)=h−hcos(θ+2ω)

  p(θ)+p(θ+ω)+p(θ+2ω)=h

===================================

【3】ルーローの二角形

(1)0≦θ≦π/3のとき

  円弧の中心(0,h/2),半径h/2

 → p(θ)=h/2−h/2cosθ,p(0)=p’(0)=0

(2)π/3≦θ≦2π/3のとき

  円弧の中心(h√3/4,h/4),半径0

 → p(θ)=−h/4cosθ+h√3/4sinθ

(3)2π/3≦θ≦4π/3のとき

  円弧の中心(0,0),半径h/2

 → p(θ)=h/2

(4)4π/3≦θ≦5π/3のとき

  円弧の中心(−h√3/4,h/4),半径0

 → p(θ)=−h/4cosθ−h√3/4sinθ

(5)5π/3≦θ≦2πのとき

  円弧の中心(0,h/2),半径h/2

 → p(θ)=h/2−h/2cosθ

===================================

【4】内転形であることの証明

(1)0≦θ≦π/3のとき,2π/3≦θ+ω≦π,4π/3≦θ+2ω≦5π/3

 → p(θ)=h/2−h/2cosθ

 → p(θ+ω)=h/2

 → p(θ+2ω)=−h/4cos(θ+2ω)−h√3/4sin(θ+2ω)

  p(θ)+p(θ+ω)+p(θ+2ω)=h

(2)π/3≦θ≦2π/3のとき,π≦θ+ω≦4π/3,5π/3≦θ+2ω≦2π

 → p(θ)=−h/4cosθ+h√3/4sinθ

 → p(θ+ω)=h/2

 → p(θ+2ω)=h/2−h/2cos(θ+2ω)

  p(θ)+p(θ+ω)+p(θ+2ω)=h

===================================