■ハーディー・ワインベルグの法則

 遺伝子Aは遺伝子aに対して優性であるとする.片親からひとつずつ遺伝子をもらうので遺伝子型はAA,Aa,aaの3種類あるが,AAとAaの形質型は同じである.

 形質型をA,aで表すことにすると,世代とともにAが増えそうなものであるが,しかし,このとき遺伝子頻度は一定に保たれ,遺伝子頻度は変化しないというのがハーディー・ワインベルグの法則と呼ばれるものである.

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 1908年にイギリスの数学者ハーディーとドイツの医師ワインベルグがそれぞれ独立にこの法則を導いた.

 Aの遺伝子頻度をp,aの遺伝子頻度をqとする(p+q=1).このとき,

  (pA+qa)^2=p^2AA+2pqAa+q^2aa

である.

 次世代集団の遺伝子Aの頻度をp’,遺伝子aの頻度をq’とする(p’+q’=1).遺伝子プール内の遺伝子総数は各個体がAまたはaを2個ずつもつから,

  (p^2+2pq+q^2)×2

 遺伝子Aの総数はAAの個体が2個,Aaの個体が1個であるから

  p^2×2+2pq

したがって,

  p’=(p^2×2+2pq)/{(p^2+2pq+q^2)×2}

=2p/2=p

 遺伝子aの総数はaaの個体が2個,Aaの個体が1個であるから

  q^2×2+2pq

したがって,

  p’=(q^2×2+2pq)/{(p^2+2pq+q^2)×2}

=2q/2=q

となって,一定に保たれるというわけである.

 この法則が成り立ち,形質型aの頻度が0.16とすると,q^2=0.16→q=0.4,p=0.6.このとき,遺伝子型Aaの頻度は2pq=12/25(48%)となる.

 しかし,この状態では遺伝子頻度が変わらないため進化は起こらない.逆に,進化の研究はどのようにハーディー・ワインベルグの法則が破られているかを研究することといえるのである.

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