■少数の法則(その2)

【1】稀な現象のモデル分布

 時間的・空間的にランダムに起こる事象,たとえば,ある微小面積に落ちる雨滴数や放射性物質からある時間内に放射される放出粒子数などは,いずれもポアソン分布に従う確率変数とみなすことができます.

 その際,ある一定の時間Tの間に事象の起こる数を数えることにして,得られた回数をνで表すことにする.この実験で時間Tの間に起こる事象の平均回数に関する最良推定値は,観察された回数νであるが,その誤差は平方根をとって√νとなる.これを「計数実験についての平方根則」とよぶ.

 なお,一定時間内の放射線のカウント数を数える代わりに,あるカウント数に足すウルまでの時間を測定したら,どのような解析理論が組み立てられるかについては,粟屋隆「時間測定法による放射能測定データの解析」に詳しい.nカウントに達するまでの測定時間は連続量であるから,区間推定の目的にとってはカウント数だけに頼るよりはるかに適している.

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【2】ポアソン分布の再生性

 ポアソン分布する変数の和の分布は平均Σλi,分散Σλiのポアソン分布になります.一方,差の分布は簡単には表せませんが,第1種変形ベッセル関数を用いて

  p(x)=exp(-λ1-λ2)(λ1/λ2)^x/2 Ix/2(2√(λ1*λ2))

で表されます.

 歴史を回顧すると,1898年,ボルトキューウィッツは帝政プロシア軍隊の兵士の中で馬に蹴られて死亡した者の数の分布がポアソン分布でよく近似されること示しました.この事例はポアソン分布が統計学で使われた最初の例ではないかと考えられていて,実際のデータによくあてはまったことからポアソン分布のことを小数の法則と呼びました.

 ポアソン過程にしたがう現象の時間間隔は指数分布にしたがうのですが,そのポアソン分布からは指数分布やガンマ分布が導出できます.ポアソン分布は連続分布における正規分布と類似の役割をもち,多方面にまたがって応用されています.

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