■フェルマー数(補遺10)

【1】オイラー独自の理論的裏付け

 ここでは,

  p|a^(2^n)+1  (p≠2の素数)

ならば

  2^(n+1)|p−1

となることの証明を与えておきます.

[1]2平方和定理(フェルマー・オイラーの定理)

  (a^2+b^2)(c^2+d^2)=p^2+q^2,p=ac−bd,q=ad+bc

 特別な素数である2を除外して,素数は4で割ると余りが1になるもの(5,13,17,29,37,41,・・・)と3になるもの(3,7,11,19,23,31,・・・)の2種類に分けられます.このうち,4n+1の形の素数は2つの整数の平方の和として表されます.たとえば,5=1^2+2^2,13=2^2+3^2,17=1^2+4^2,29=2^2+5^2,・・・.しかし,4n+3の形の素数は1つもこのようには表せないのです.

 この定理はフェルマーの「直角三角形の基本定理」と呼ばれ,フェルマーは無限降下法でこれを証明しましたが,その証明は不十分で,100年後のオイラーによって完全な証明(一意性も込めた証明)がなされています.

[2]この定理を拡張する方向としては,ひとつには未知数の個数を増すこと,もうひとつには指数を大きくすることです.後者の方向に押し進めていくと

(1)a^2+b^2の奇約数はつねに4n+1の形である

(2)a^4+b^4の奇約数はつねに8n+1の形である

(3)a^8+b^8の奇約数はつねに16n+1の形である

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(4)a^2^(2^m)+b^2^(2^m)の奇約数はつねに2^(m+1)n+1の形である

 フェルマー数はFn=2^(2^n)+1という形の数ですが,a=2,b=1とおくと

(5)フェルマー数2^(2^m)+1の奇約数はつねに2^(m+1)n+1の形である

という言明に到達します.m=5の場合,約数は64n+1という形でしかあり得ないことになります.

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【2】オイラーとフェルマー素数

 フェルマーはこの型の数がすべて素数だと勘違いしていて必ず素数を与える式として考え出されたのですが,n=5であっけなく破綻してしまいました.

  F5=2^(2^5)+1=4294967297=641×6700417

 この間違いを発見したのはフェルマーから約100年後のオイラーです.彼は約数641をたまたまあてずっぽうでみつけたのでも,2,3,5,7,・・・と割っていって執念で見つけたのでもありません.オイラーはFnが合成数であるならば,それはあるkに対してk・2^(n+2)+1であることを知っていて,F5の中の因数641=5・2^7+1を見つけたのです(1732年).

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 Fnが合成数であるならば,素因数はあるkに対してk・2^(n+2)+1であることを認めると

  p|F5ならば2^7|p−1

すなわち,p=1+k・2^7の形でなければならないことがわかります.kに1〜5まで入れると

    k   1+k・2^7   素数

    1     129    ×

    2     257    ○

    3     385    ×

    4     513    ×

    5     641    ○

 ここで得られた素数257,641の中から,F5=4294967297を割るものを探すと641が最初のものであることがわかります.このことから

  F5=4294967297=641×6700417

    =(5・2^7+1)(52347・2^7+1)

と分解されF5が素数でないことが証明されます(1732年).

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 ベネットは,実際に割り算することなしにこのことを確認しています.すなわち,

  641=5^4+2^4=5・2^7+1

  2^28(5^4+2^4)/641=2^28 (余り0)

  ((5・2^7)^4−1)/641=(5・2^7−1)((5・2^7)^2+1) (余り0)

したがって,2^28(5^4+2^4)−((5・2^7)^4−1)=2^32+1も641で割り切れる.

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