■置換多面体の空間充填性(その91)

【1】正24胞体は平行多面体である

 正多面体の各面の中心(重心)を順に結んで立体を作ると,もとの正多面体と面と頂点の関係が逆向きの正多面体ができます.互いに表と裏の関係にある多面体を双対多面体といいます.正四面体ではふたたび正四面体ができます.

 正24胞体は自己双対とはいっても,正四面体のように面の対蹠が頂点になっているわけではありません.正24胞体は中心対称であって,平行多面体なのです.

 正24胞体は,すべての次元を通じて,単体以外の唯一の自己双対な正則胞体です.この24胞体の対称性を,鏡映で生成される既約な有限群(ルート系)との関係でみても興味深いものがあり,正24胞体は1つの例外型対称群F4をもつことが知られています.2個の正24胞体を中心を一致させて重ねて回転させます.これはちょうど平面上でダビデの星が2つの正六角形を30°ずらして重ねたものと似ているわけですが,この対称性がF4に相当します.正24胞体は単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であるという事実がF4と関係しているのですが,この点もまた注目すべきものでしょう.

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【2】正16胞体は平行多面体ではない

 単独で空間を充填する平面充填正多角形は3種類(正三角形・正方形・正六角形),空間充填正多面体は1種類(立方体)ですが,4次元空間を1種類の正多胞体で埋めつくす図形は,正8胞体,正16胞体,正24胞体の3種類であり,4次元の最密規則的充填構造は,正24胞体で埋めつくされているときであることが知られています.

 ところで,4次元立方体の1つおきの頂点を結べば,正16胞体ができますから,正16胞体は平行移動だけで空間充填することはできません.正16胞体は平行多面体ではないのです.なお,正24胞体に含まれる正16胞体は互いに60°をなしますから,D4の3対性をもっています.

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[補]中心からひとつおきの頂点ベクトル

  (1,1,1,1),(1,1,−1,−1),(1,−1,1,−1),(1,−1,−1,1)は互いに直交して長さが2,すなわち,正16胞体ができます.

 一方,切りとった直角三角錐RTの頂点ベクトルは

  (1,0,0,0),(0,1,0,0),(0,0,1,0),(0,0,0,1)であって,(1,1,1,1)方向を向きません.

 このことから,正16胞体は平行多面体ではないことがわかります.

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