■置換多面体の空間充填性(その3)

 平行多面体は結晶(金属結晶や鉱物結晶)でよくみられる構造である.たとえば,切頂八面体は体心立方格子のボロノイ領域,菱形12面体は面心立方格子のボロノイ領域であるから重要,菱形12面体はザクロ石(ガーネット)にもみられる.

 立方体は単純立方格子あるいは平行六面体は方解石にみられるから重要,六角柱はコランダム(ルビー・サファイア),歯のエナメル質などにみられるが,長菱形12面体はあまりみられないから平行多面体の異端児である.

 最初は体心立方格子と面心立方格子の相転移を考えたので,切頂八面体と菱形12面体に共通する元素多面体は何かという問題に帰着した.この答えはc-squadronであって,秋山先生が命名された.体心立方格子と面心立方格子の相転移の途中で,単純立方格子を経由することから,切頂八面体と菱形12面体と立方体に共通する元素多面体は何かという問題になったが,それにはc-squadronを2分割すればよい.この多面体がpentadronである.ペンタドロンは切頂八面体を48分割した5面体である.

 さらにその発展型が5種類ある平行多面体に共通する元素多面体は何かという問題である.私は当初直六角柱を考えたのでペンタドロンをさらに2分割する必要があったが,秋山先生が斜六角柱でよしとしようとおっしゃったことがきっかけで,長菱形12面体も含め,すべての平行多面体の元素数が1であることが確定したことになる.ひとつの形から平行多面体が何でもできてしまうわけであるから,結晶学者は興味ももってくれるかもしれないと思う.

 平行多面体(5種類):元素数1

 正多面体(5種類):元素数4

 準正多面体(13種類):元素数13(予想)

 JZ多面体(92種類):元素数33(予想)

 さらに最近では,2つの元素で平行多面体5種類と正四面体,正八面体の7種類を作ることができるもの,4つの元素で平行多面体5種類と正多面体5種類の計9種類を作ることができるものが見つかっている.

 また,相転移のモデルとなるフリップ・フロップ変身図形が,すべての平行多面体の間で見つかっている.何かに応用できると良いなと思うが,いますぐにはいいアイディアは浮かばない.

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