■立方体と正八面体の断面(その7)

 立方体の断面は,3角形・4角形・5角形・6角形などいろいろな形をとるが,立方体の中心を通り,断面が正六角形となるとき,断面積が最大値を取りそうに思えるが,そうではない.今回のコラムでは「奇妙な中心断面」について考えてみたい.

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【1】ボールの不等式

 n次元単位立方体の断面の体積の最大値について考えてみましょう.1辺の長さが1の正方形(2次元単位立方体)の切り口は単に線分になるから,その長さが最大となるのは対角線であって,最大値は√2となる.対角線とは頂点とその対角にある頂点を結ぶ線分で,正方形の原点を通るものである.

 また,(3次元)単位立方体の断面は,3角形・4角形・5角形・6角形などいろいろな形をとるが,立方体の中心を通り,辺とその対蹠に位置する辺を含む平面で切ったとき,断面積は最大値√2になる.

 2次元・3次元での問題は,4次元の場合あるいは考察をもっと高次元化していくこともできますが,n次元単位立方体を中心を通る超平面で切ったとき,その切り口の体積(断面積)Vは,

  1≦V≦√2

であることが,ボールによって証明されています(1986年).

 ボールの不等式のいいところは,Vが次元によらず,√2で上から評価されている点です.ボールの不等式は2,3次元でも一般次元でも同じ形で成立しましたが,こんなことがつい最近まで証明されなかったのは,一般次元における幾何の問題は,高い次元になると多くの反例が作れるからだと想像されます.

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