■四元数体と3次元の回転(その3)

 フィボナッチの等式としてよく知られている恒等式

  (a^2+b^2)(c^2+d^2)=(ac−bd)^2+(ad+bc)^2は簡単に確認できます.この公式は2つの整数がともに平方数の和の形をしているなら,その2数の積も平方数で表されることを示していて,複素数と2平方和問題

[補]2平方和定理(フェルマー・オイラーの定理)

  (a^2+b^2)(c^2+d^2)=p^2+q^2

  p=ac−bd,q=ad+bc

との関連を示しています.

 また,4平方和問題

  (a^2+b^2+c^2+d^2)(p^2+q^2+r^2+s^2)=x^2+y^2+z^2+w^2は

x=ap+bq+cr+ds,

y=aq−bp+cs−dr,

z=ar−bs−cp+dq,

w=as+br−cq−dp

とおくと成り立ち,4つの平方数の和となっている数は積の演算で閉じていることを示しています.

[補]4平方和定理(オイラー・ラグランジュの定理)

 任意の自然数は4つの平方数の和の形に表せる.

 しかし,3平方和問題

  (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)=u^2+v^2+w^2

は2平方和,4平方和の場合のようなわけにはいきません.3平方和の積が必ずしも3平方和とならないからです.

 たとえば,(a,b,c),(x,y,z)が整数なら(u,v,w)も整数であるが(a,b,c)=(1,1,1),(x,y,z)=(0,1,2)のとき

  (1^2+1^2+1^2)(0^2+1^2+2^2)=15≠u^2+v^2+w^2

(a,b,c)=(1,1,1),(x,y,z)=(1,2,4)のとき

  (1^2+1^2+1^2)(1^2+2^2+4^2)=63≠u^2+v^2+w^2

は成立しない.

[補]3平方和定理

 「8n+7の形の数は3個の平方数の和では表されない」からである.

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 |a|・|b|=|c|,すなわち

(a1^2+a2^2+・・・+an^2)(b1^2+b2^2+・・・+bn^2)=(c1^2+c2^2+・・・+cn^2)

の恒等式はn=1,2,4,8に対してだけ満たされるという驚くべき結果が19世紀末,フルヴィッツにより証明されています(1898年).したがって,ある条件のもとで,数の体系は八元数までですべてであることが知られていて,数の系列は実数(一元数)→複素数(二元数:ガウス)→四元数(ハミルトン)→八元数(ケイリー)というようになっているのです.

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