■SPLAG(その8)

 n次元ユークリッド空間における球充填密度Δ(n)のn→∞における漸近挙動が,

  −1≦(log2Δ(n))/n≦−.599

であること,そして

  (log2Δ(n))/n → −1   (n→∞)

が成り立つかどうかが問題になっている.

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【1】球充填密度(log2Δ(n))/nの下界

 ミンコフスキーは,数の幾何学の理論を利用して,

  Δ≧ζ(n)/2^(n-1)

を得た.ここで,n→∞とするとき,リーマンのゼータ関数

  ζ(n)=Σ1/k^n→1

であるから,

  log2Δ≧−n+1

したがって

  (log2Δ(n))/n≧−1

となる.

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【2】球充填密度(log2Δ(n))/nの上界

 一方,上界は単体的密度限界dnで粗雑ながら押さえられる.

  Δ≦dn≦1

すべてのnに対して,

  (−n≦)log2Δ≦−n/2+log2(n/2+1)

が成り立ち,n→∞のとき,

  dn 〜 (n/e)2^(-n/2)

であるから,これで,n→∞のとき,

  (log2Δ(n))/n≦−0.5

が得られる.

  (log2Δ(n))/n≦−0.599

はそれを精緻化したものである.その詳細は,0<φ<π/2に対して

  (log2Δ(n))/n≦(1+sinφ)/2sinφlog2(1+sinφ)/2sinφ−(1−sinφ)/2sinφlog2(1−sinφ)/2sinφ

≦−1/2log2(1−cosφ)−0.0990

≦−.5990

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【3】まとめ

 格子状,非格子状の最密充填配置における

  −1≦(log2Δ(n))/n≦−0.599

という結果は,次元がひとつ増すごとに充填密度Δ(n)がおよそ1/2〜1/1.51になるという計算が成り立つことを示している.

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