■ルジャンドルの定理(ある有名な数論の定理)

 今回のコラムでは,ルジャンドルの定理(3元2次形式)とこの定理から導かれる結果を取り上げてみますが,数論においてはどのような整数が2次形式で表現されるかというのは基本的な問題のひとつです.

 2元2次形式のディオファントス方程式

  ax^2+2hxy+by^2=n   (a,b,h,nは整数)

  [x,y][a,h][x]=n

       [h,b][y]

が整数解(x,y)をもつか否かを判定し,それを決定するためのアルゴリズムが存在します(2次形式の同値類を決定する方法も存在する).

 しかし,一般に3変数以上,3次以上のディオファントス方程式を解く有力な方法はまったく見つかっておらず,たとえば,3元3次形式:x^3+y^3+z^3−3=0が(1,1,1),(4,4,−5)とその並び換え以外の整数解をもつかどうかすらわかっていません.

 ロシア人のマチアセビッチにより,すべてのディオファントス方程式(不定方程式)の解の存否を判定するアルゴリズムが存在しないことが証明されているのですが,わかっていることといえば

a)整数係数のax+by=cは無数の有理数解をもちます.

b)二次曲線ax^2+by^2=cのグラフは円錐曲線ですが,この方程式が有理数解を1つもてば,実は無数のもつことを示すことができます.たとえば,方程式x^2+y^2=1には,無限に多くの有理数解,(3/5,4/5),(5/13,5/12),(12/37,35/37)など・・・が存在します.ところが,半径が√3の円,x^2+y^2=3になると有理点は全くなってしまいます.2次曲線は有理点を無限のもつか,1つももたないかのどちらかです.

c)「三次曲線ax^3+by^3=cや楕円曲線y^2=ax^3+bx^2+cx+dなど,3次以上の不定方程式には一般に整数解が有限個しかない.」

 これを証明したのはジーゲルで,その定理はジーゲルの有限性定理(1929年)と呼ばれています.この定理により,すべての2変数多項式の可解性が決定したわけではありませんが,少なくとも2変数2次多項式の可解性条件はわかったことになります.

d)また,モーデル・ファルティングスの定理(1983年)とは,「種数が2以上の代数曲線は有理点を有限個しかもたない.」というものです.2次曲線のように有理点全体を1つの変数でパラメータ表示できる曲線を種数が0の曲線と呼んでいます.一方,種数が1である曲線に楕円曲線があります.したがって,有理点が無数にあるような曲線は種数が0か1ということになり,直線(種数0)か,円錐曲線(種数0)か,楕円曲線(種数1)に限られてきます.また,リーマン・フルヴィッツの公式よりフェルマー曲線x^n+y^n=1は種数が(n−1)(n−2)/2で,これはn=3のとき1ですが,n≧4のときは2以上となりますから,そこでフェルマーの予想を征するために必要となるのが楕円曲線であったというわけです.

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【1】3平方和の定理(ルジャンドル,1798年)

  「正整数nが3つの平方数の和として表せる←→4^m(8k+7)の形をした数ではない.」

 n≠4^m(8k+7)はnが高々3個の平方数で表されるための必要十分条件です.ガウスの定理ともルジャンドルの定理とも呼ばれますが,ルジャンドルは2次形式ax^2+by^2+cz^2の研究を通して,より一般的な3元2次形式論としてこの結果を得ています.

[参]フェルマー・オイラーの定理(2平方和定理)

 m=4k+3の形をした数は2つの平方数の和になりません.mの素因数分解におけるp=4k+3の形のすべての素因数の指数が偶数であるときに限り,2つの平方数の和の形に表すことができるのです.

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【2】ガウスの定理

  「どの正整数も3つの3角数の和として表される.」

 ガウスは1796年の日記に「わかった! n=△+△+△」と書いていますが,それはすべての整数は3つの3角数の和によって表しうるという意味です.ガウスの発見は8n+3の形をしたすべての整数を3つの奇数の平方の和として表せることを意味していて,3平方和定理「8n+7の形の自然数は3つの平方数の和では表せない」を用いると「n=△+△+△」を簡単に示すことができます.

(証明)4^m(8k+7)でない奇数は3平方和で表せますから,任意の自然数nに対して8n+3=x^2+y^2+z^2と書けます.このとき,x=2p+1,y=2q+1,z=2r+1とおくと

  n=p(p+1)/2+q(q+1)/2+r(r+1)/2

 一般に「m角数定理」とは「すべての自然数はたかだかm個のm角数で表せる」というものです.この定理でm=3の場合がガウスの定理「n=△+△+△」,m=4の場合がラグランジュの定理「n=□+□+□+□」に相当します.m=5の場合が五角数定理「n=☆+☆+☆+☆+☆」の相当するわけですが,フェルマーが遺して後世を悩ましていたこの命題は,オイラー,ラグランジュ,ルジャンドルなどの研究を経て,1813年,コーシーが証明しセンセーションを巻き起こしました.ガウスはフェルマーの主張のひとつを証明したことになります.

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【3】ルジャンドルの4平方和定理

 任意の整数nは,n個平方和

  n=1^2+1^2+・・・+1^2

に書けますから,これをなるべく少ない数の平方和でnを表そうと思うのは自然な成り行きです.

 「すべての正の整数は高々4個の整数の平方和で表される」というのが,「ラグランジュの定理」です.驚くべきことに,7のみならず,任意の自然数がたった4つの平方数の和の形に表せるのです.

  7=2^2+1^2+1^2+1^2

  2=1^2+1^2+0^2+0^2

このことを,シンボリックに書くと

  n=□+□+□+□

となります.□は平方数の意味です.

 ラグランジュの4平方和定理では0も含めて考えていますが,「正」という条件を付けてみることにすると,

 「4つの正の平方数の和として表されない正の整数をすべてあげると

1,3,5,9,11,17,29,41,2×4^m,6×4^m,14×4^m」

が得られます(ルジャンドルの4平方和定理).

 ルジャンドルの3平方和定理は,どのような数が4つの正の平方数の和として表されるか否かを決定するというわけです.

(証明)8k+3の形をした数は3つの奇数の平方の和として表せることは前述したとおりですが,

  8k+3の形の数から4^2を引くと → 8k+3の形の数

となることからも,3つの平方数の和として表すことができることがわかります.

 同様に

  8k+6の形の数から4^2を引くと → 8k+6の形の数

ことから,8k+3と8k+6の形をした数は,2つの平方数の和としては表すことができない→3つの平方数の和として表されなければなりません.また,その数の4倍を考えれば32k+12と32k+24も3つの平方数の和として表されます.

  8k+2の形の数から2^2を引くと → 8k+6の形の数

  8k+3の形の数から4^2を引くと → 8k+3の形の数

  8k+4の形の数から1^2を引くと → 8k+3の形の数

  8k+6の形の数から4^2を引くと → 8k+6の形の数

  8k+7の形の数から2^2を引くと → 8k+3の形の数

  8k+1の形の数から1^2,3^2,5^5,7^2を引くと → 32k+24の形の数

  8k+5の形の数から1^2,3^2,5^5,7^2を引くと → 32k+12の形の数

 したがって,49よりも大きく8の倍数でない任意の整数は4つの正の平方数の和として表されることがわかります.49までの8の倍数でない数について1,2,3,5,6,9,11,14,17,29,41が4つの正の平方数の和として表されないことを確認します.

  1=1^2           11=3^2+1^2+1^2

  2=1^2+1^2        14=3^2+2^2+1^2

  3=1^2+1^2+1^2     17=3^2+2^2+2^2

  5=2^2+1^2        29=4^2+3^2+2^2

  6=2^2+1^2+1^2     41=6^2+2^2+1^2

  9=2^2+2^2+1^2

 あとは,8kの形をした数が4つの正の平方数の和として表される場合について考察します.4つの平方数のうち奇数が0個(または1個または2個または3個または4個)ならば,和は4k(または4k+1または4k+2または4k+3または8k+4)の形をしています.たとえば,

  (2p+1)^2+(2q+1)^2+(2r+1)^2+(2s+1)^2

 =4p(p+1)+4q(q+1)+4r(r+1)+4s(s+1)

 =8k+4

 したがって,8kの形をした数が4つの平方数の和として表されるならば,その4つの正の平方数はすべて偶数でなければなりませんから,2kが4つの正の平方数の和として表されるときに限られます.

  (2p)^2+(2q)^2+(2r)^2+(2s)^2=8k

  p^2+q^2+r^2+s^2=2k

ここで,2kが8の倍数であればさらに4で割って,2kは8の倍数でないとすることができますから,前述の場合に帰着されます.

 すなわち,8の倍数でない2k(偶数)が4つの正の平方数の和として表されないのは

  2k=2,6,14

したがって,2,6,14といった整数の4倍

  8k=2×4^m,6×4^m,14×4^m

は4つの正の平方数の和として書けないことがわかります.

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【4】4平方和定理の拡張

 何種類かの4変数2次形式,たとえば,

  x^2+y^2+z^2+mw^2   (m=1,2,3,4,5,6,7)

はすべての正の整数を表現することができます.

(証明)ある数を表現しないと仮定すると,3平方和定理によりその数は8k+7の形でなければなりません.そのような数から,

  mw^2  (w=1,1,2,1,1,1,2)

を引くと,それぞれ8k+6,8k+5,8k+3,8k+3,8k+2,8k+1,8k+3の形の数となり,これらはすべてx^2+y^2+z^2の形に表現されます.

 なお,変数の数を任意とする正定値2次形式(たとえば,a^2+2b^2+5c^2+5d^2+15e^2)が

  1,2,3,5,6,7,10,14,15

の15までのなかでこれら9つの数を表現するならば,その2次形式はすべての正整数を表現することが知られています.この定理はルジャンドルの4平方和定理も内包しています.

 しかしながら,ルジャンドルの定理のように3変数2次形式

  [x,y,z][a,h,g][x]=n

         [h,b,f][y]

         [g,f,c][z]

では表現できないような数が必ず存在します.

 たとえば,

  F(x,y,z)=x^2+2y^2+yz+4z^2

は1から30までの整数をすべて表しますが,31を表すことはできません(32は表すことができる).

 ここではオイラーの素数生成式(n^2+n+41はnが0から39まですべて素数を与える)のようにうまい具合にいっている3変数2次形式を掲げましたが,正定値3変数2次形式はどれもある整数を表わすことができないのです.

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[参]コンウェイ「素数が香り,形が聞こえる」シュプリンガー・フェアラーク東京

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