■ふたりのタイリスト

 杉本晃久さん(五角形による平面充填の研究者)に1種類のタイルで非周期的タイル張り可能な場合を教えてもらった.付き合わせ条件をもった1つの六角形でaperiodicタイリングを作れる(ただし六角形は鏡映像を使う)のであるが,意外と知られていない(話題になっていない)ので,ここで紹介したい.その前に・・・

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【1】マジョリー・ライス

 ここでは正多角形ではない不規則な凸多角形による平面充填形について考えてみましょう.三角形と四角形の場合は凸でなくてもよいのですが,どんな形の三角形,四角形でも平面を過不足なく敷きつめることができます.凸六角形では本質的に異なる3つのタイプの六角形だけが平面を埋めつくします.また,凸な多角形では七角以上になるとどんな型のものもうまくいきません.

 五角形は特に興味津々です.正五角形はどうしても隙間があいてしまいますが,凸五角形では,ホームベース形も含めて,現在,14種の平面充填形が知られています.六角形に関しては3種類以外のものは存在しないことが示されていますが,五角形に関しては14種ですべてかどうかはまだ証明されていません.

 五角形のタイル貼りについては数学者のラインハルトや物理学者のケルシュナーが研究していたのですが,このような問題はとかくとり漏らしやすいもので,見逃されているものがあるやもしれません.1975年にはほとんど数学を学んだことのない主婦マジョリー・ライスが「サイエンティフィック・アメリカン」誌の記事に触発されて,五角形で平面を敷き詰めるパターンでそれまで知られていないものを3種類も発見したほどですから・・・.

 彼女は5人の子供の母親で,台所仕事をしながら数学の教授達があり得ないといった新しい五角形タイルを発見したのですが,彼女は高校より上の教育は受けていませんでした.新たに何か学んで新しい発見をするのに何歳になっても遅すぎることはないという教訓です.

 非常に単純だが,深淵な数学的発見が今日なお可能である一つの例として有名な話ですが,まだ新しいタイプが発見される可能性は残されています.興味と熱意と根気のある読者は是非挑戦してみてください.

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【2】ジョアン・テイラー

 実は,最近まで非周期的に平面をタイル貼りできる図形は,すべて周期的にも平面を充填できると考えられていた.

 1964年,非周期的にタイル貼りできるが周期的にはタイル貼りできないタイルの組み(集合)が存在するというバーガーの発見には大きな注目が集まったが,このタイル貼りを実現するのには20000種以上のタイルを必要とした.

 その後,ロビンソンはタイルの種類を6つまで減らしたが,1974年にイギリスの数理物理学者ペンローズの発見した,凧と矢(あるいは2種類の菱形)を組み合わせて平面を非周期的に敷きつめるものが最も構成要素の少ないものと考えられていた.ところが,・・・

[Q]1個の要素からなる非周期的集合(付き合わせ条件があっても,なくてもよい)があるか?

[A]実は1種類の場合が見つかっています.Joshua E. S. SocolarとJoan M. Taylorが示した非周期六角形タイルは,この問題(Einstein problem)の肯定的な解決になっています.つまり「2個の要素からなる非周期的集合」がペンローズ・タイルであり,「1個の要素からなる非周期的集合」がこの問題の解というわけです.

[参]J. E. S. Socolar and J. M. Taylor, An aperiodic hexagonal tile, Journal of Combinatorial Theory

18 (2011), 2207-2231.

[参]J. E. S. Socolar and J. M. Taylor, Forcing nonperiodicity with a single tile, to appear in Mathematical Intelligencer 33 (2011).

 非常に単純だが,深淵な数学的発見が今日なお可能である最近の例です.ジョアン・テイラーはタスマニア在住で,ほとんど数学を学んだことのない女性であるという点はマジョリー・ライスと共通しています.

A number of so-called amateurs have discovered really interesting things. A recent example is Joan Taylor, who lives in Tasmania and who has created some beautiful aperiodic hexagonal tilings.

She also has no formal mathematical training, but her work has proven to be most interesting to the aperiodic tiling community.

And she has better insight than most of us into the geometry of these tilings.

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