■n角の穴をあけるドリル(その7)

 ルーローの三角形を応用すれば正方形の穴,藤原・掛谷の2角形を応用すれば正3角形の穴をあけるドリルを作ることが可能になることを知っている人は少なくないであろう.

 もちろん,中心が固定されていてはダメである.それでは中心をどのように動かせば正方形や正三角形の穴をあけるドリルを作ることができるのだろうか? また,どのような図形を用いれば,正五角形の穴をあけることは可能になるだろうか? この問題に答えられる人は,たとえいたとしても少ないであろう.

 本シリーズではn角形の穴をあけるドリルを扱ってきたが,今回は正n角形の中の(n−1)角ドリルの動画を作成し,オーバーレイさせた最後の絵を示すことにする.

 実際,ルーローの三角形の形の刃をもつドリルで四角の穴をあけるものがあるし,マツダのロータリーエンジンはルーローの三角形を応用したもので,ピストンエンジンに較べて可動部分が少なく,大きさの割には高い出力が得られる.これらの図形にはどのような使い道が考えられるだろうか?

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【1】出力例

[1]三角の穴をあけるドリル

[2]四角の穴をあけるドリル

[3]五角の穴をあけるドリル

[4]六角の穴をあけるドリル

[5]七角の穴をあけるドリル

[6]八角の穴をあけるドリル

[7]九角の穴をあけるドリル

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【2】おまけ

 鋭角三角形のビリヤード台を考えると,各辺で1回ずつ反射して常に同じ軌道をぐるぐると周り続ける巡回軌道が存在する.ちょうど1周で最初の点に戻る巡回軌道はあらゆる巡回軌道のなかで最短のものであって,三角形の各頂点から対辺に下ろした垂線の足を結ぶ垂足三角形に限られる.すなわち,垂線の足の位置から他の垂線の足の位置に向けてビリヤードの球を発射させると,3回壁にあたった後,最初と同じ位置・同じ角度で戻ってくるのである.

 それではビリヤード球が立方体の内部で各面で1回ずつ反射して,常に同じ軌道をぐるぐると周り続けることは可能だろうか? このような3次元ビリヤードを見たことのある人は,たとえいたとしても少ないであろう.

 実はこれは可能であって,スタインハウスが発見した例は各面を3×3に分割した升目の角をイス型に巡回するもの(1:2の比に対角線を分割する閉六角形)である.4つの側面の中心と底面,上面の対角線を1:3の比に分割する閉八角形も驚くほど簡単な例である.2つの軌道に共通する特徴は立方体に内接する正四面体の辺上(ケプラーの八角星)を通るということである.

 また,コンウェイは正四面体において同様の巡回軌道を発見している.それは各面の中央に正四面体の辺の1/10の長さをもつ正三角形の頂点を通るものである.

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