■原子物理学100年(その10)

 これまで,イオン化エネルギーがeV(エレクトロンボルト)単位であるに対して,X線のエネルギーはkeVの単位(千倍),核力のポテンシャルはMeV(百万倍)でとても強いことをみてきた.

 その放射線の大きなエネルギーの起源は何だろうか? 核子の結合エネルギーは,長距離力のクーロン力と違って短距離で働いていることが放射線のけた外れに大きなエネルギーの源になっているのである.

 俗説に,アインシュタインのE=mc^2で,質量が失われた分だけエネルギーが発生するのが原爆の原理のようなことが書かれているが,この議論はまったくのピント外れである.原爆でも原子炉でも燃料があらかたエネルギーに変換されるというのは完全な間違いであって,質量の減少はごくわずかでもとの質量の1/1000にすぎない.

 1945年に広島に投下された原爆「リトルボーイ」には64キログラムの濃縮ウランが使用されたが,実際の爆発のエネルギーに転換されたのは鉄砲玉ひとつ分程度でしかなかった.たったそれだけで都市をそっくり破壊したのである.その結果,ほとんどの質量が「死の灰」として遺されてしまうことになる.

 原子炉から発生する死の灰の処理方法はいまだ確立していない.無害化する技術が将来考案されるかもしれないという脳天気な人もいるが,それはまったく現実的ではない.数個の原子核を変換することは理論的には可能であっても,現実的に何トンもある死の灰を無害化することはできない.

 たとえ,地下に埋めたとしても,日本のように人口密度の高い地震国で,国中に活断層が走り,地下水系の豊富な国では,地下水までもが汚染されてしまうことになるだろう.

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