■関数方程式 f(x+y) = f(x) + f(y) について

 関数方程式 f(x+y) = f(x) + f(y) をみたすような関数fを求めよ。

という問題がある。

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 まず、fが連続と仮定したとき、

  f(x)= ax

となることは、容易に証明できる。

 ステファン・バナッハは、fが可測ならばf(x)は連続であること、つまり f(x)=a x

となることを証明した。

(Sur l'equation fonctionnelle f(x+y)=f(x)+f(y) 1920 Fundamenta Matimaticae 123-124)

証明は、Luzinの定理を用いているが、非常に簡素でわかりやすいものである。

 この定理については、バナッハに関する伝記などで言及されているので、知っている人は多いと思う。

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 ところが、同じFundamenta Matimaticaeの同じ巻にヴァーツワフ・シェルピンスキが同じ題の論文を発表している。

(Sur l'equation fonctionnelle f(x+y)=f(x)+f(y) 1920 Fundamenta Matimaticae 116-122)

仮定も結論もバナッハと同じである。

 シェルピンスキの論文は、選択公理を用いて証明されており、バナッハよりも長い論文となってしまった。

 Lusinの定理は、選択公理を必要としていなかったはずだ。証明の簡潔さなどから、バナッハの論文の方が有名になってしまったということらしい。

 シェルピンスキもポーランド学派のスターとして大活躍した。彼は、選択公理と連続体仮説にかんして沢山の論文を書いた。1976年に、シルピンスキ選集全三巻が出版されたが、この中に上記の論文は採録されなかった。

 彼は「手紙を書くように論文を書いた」といわれている。「全集」を編纂すること自体が無理であり、この論文は選に漏れたらしい。

 インターネットで、検索しているうちに、

  http://matwbn-old.icm.edu.pl/

シェルピンスキの論文の存在に気づき、ちょっとめを通してみた次第である。  (阪本ひろむ)

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