■多元環とリー群(その6)

 すべてのリー群にはリー代数が付随します.リー群に対応するリー環はドイツ文字の小文字を用いて表されるのが通例となっているようですが,ここでは通常の小文字で代用します.

  [参]佐藤肇「リー代数入門」裳華房

から,古典型リー代数の例を拾い上げてみましょう.

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 行列Xの対角成分の和をTr(X)で表すと,n次特殊線形群SL(n)に対応するリー環は

  sl(n)={X|Tr(X)=0}

で定義されます.トレースが0という制限は行列式が1という条件からくるものなのですが,自由度を1だけ減らすため,n^2−1次元のリー代数になります.

 また,正方行列Jを1つ固定して

  {X|X’J+JX=0}

と定めます.このとき,J=En(単位行列)とおくと,n次直交群に対応するリー環

  o(n)={X|X’+X=0}

は交代行列(X’=−X)全体のなす群で,次元がn(n−1)/2のn次直交リー代数と呼ばれます.

 さらに,単位行列をブロック状・反対称に配した行列

  J=[0, Em]

    [−Em,0]

をとると,

  Sp(m)={X|X’J+JX=0}

はm次シンプレクティックリー代数となります.このときの次元はm^2+mとなります.

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[補]クリフォード代数

 クリフォード代数とは,反対称交換関係

  [Γi,Γj]=ΓiΓj+ΓjΓi=2δij

満たす行列Γの組のことで,δはクロネッカーのデルタです.

  δij=E(i=j)

    =0(i≠j)

 交換子積

  [X,Y]=XY−YX

は行列の積の非可換性を図るためのものなのですが,物理学における超対称性変換はリー環をなさないので,2つの超対称変換の非可換性を図るには交換子でなくて,反交換子を使う必要がでてきます.

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