■原子物理学100年(その5)

 2002年,小生はコラム「サンゴ礁と豊饒の海」で以下のようなことを書いている.

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【1】バックグラウンド(2002年)

 地球誕生以来,炭酸ガスほど大気中の動向がよく知られている物質はないという.炭酸ガスは,太古の地球では大気中に98%とか99%という量を占めていたらしいが,植物が繁茂するようになって0.03%まで減少した.

 それが石炭,石油を燃やすようになってあと70年で化石燃料は枯渇するといわれるところまできている.大気中の炭酸ガスが急激に増えているという話はご存知と思われるが,現在の増加速度を外挿していくと,200年後くらいにCO2濃度が4%,すなわち動物の致死量に達するという試算がある.

 つまり,このままだと人類はあと200年で窒息死ということになる.多少の推定誤差はあるにしても,異常事態であることは明白で,一刻も早く炭酸ガスの上昇を食い止めないと人類は窒息死してしまう.地球温暖化による海面レベルの上昇などと寝ぼけたことをいっている場合ではないのである.

 となれば,高速増殖炉と水力発電が日本の採るべき道ということになろう.金食い虫で一向に成果の上がらない高速増殖炉の研究は世界中でストップしてしまったから,将来の代替エネルギー源をどうするかという視点に立てば,水力資源開発が手っ取り早いと思われるが,水力資源開発だって環境破壊が叫ばれる昨今である.

 増殖炉の研究は世界中でやめてしまったじゃないかという人は多いけれども,つまらない事故で壊しちゃった「もんじゅ」を再開させて,ダメだとわかるまで徹底的にやってみるだけの余地も遺されているのではないかと考えるが,如何であろうか?

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【2】再処理と高速増殖炉(2013年)

 使用済み燃料を再処理し,それが同時に原子炉の燃料になるというのが高速増殖炉であるが,その技術はあまりにも危険・困難で,その上コストがかかるので,アメリカもドイツも旧ソ連もイギリスも放棄した.最後までやっていたフランスも「スーパーフェニックス」を1998年に放棄した.「もんじゅ」は事実上ほとんど稼働していないの,停止中の現在も維持費が年200億円かかっている.

 日本だけが使用済み燃料の再処理にこだわってまだ諦めないでいるのは,原爆の燃料になるプルトニウムを将来の核武装のために備蓄しておきたいからではないかと勘ぐられても仕方がない.

 それでも「もんじゅ」も「プルサーマル計画」も直ちに放棄できないのはなぜだろう.原発がなければ電力は不足するといわれていたが(化石燃料を使ってではあるが),電力は余っていたではないか・・・と思う昨今である.

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