■書ききれなかった形の話(その4)

【1】正多面体の中の正多面体

 プラトン立体には,面と頂点の双対関係

  正四面体  ←→ 正四面体 (自己双対)

  立方体   ←→ 正八面体

  正十二面体 ←→ 正二十面体

があり,双対正多面体同士は辺の数が等しく同じ対称性をもっている.

 双対関係のほかにも包含関係があり,立方体の中に正四面体をその頂点が立方体の頂点となりその辺が立方体の面の対角線になるように内接させることができる.これと同様に,立方体の頂点が正12面体の頂点となり,立方体の各辺が正12面体の面上にあるように正12面体の中に立方体を内接させることができる.

 このことによって

  (1)正4面体群は正8面体群の部分群である

  (2)正8面体群は正20面体群の部分群である

ことが直ちにわかる.

 3次元空間の回転群の有限部分群は,コーシーが示したように

  (1)巡回群Cn

  (2)正二面体群D2n

  (3)正多面体群,すなわち

   a)正四面体群(4次交代群:A4)

   b)正八面体群(4次対称群:S4)

   c)正二十面体群(5次交代群:A5)

に限られ,

  A4<S4<A5

るというわけである.

 一番外側に辺の長さ1の正12面体をおくと,その内部に辺の長さφの立方体,その中に辺の長さφ√2の正四面体がはいる.この双対は正四面体の中に正八面体,正八面体の中に正二十面体がはいるもので,この関係は外側にも内側にも無限に続くことになる.

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【2】球面上の点配置のミニマックス問題,マックスミニ問題

 球面上に定点を決めて,もう一つの点を球面距離が最大になるようにしてやります.この点は球のちょうど反対側にある点です.次に,球面上に3つの点をおいて,3点が互いにできるだけ遠ざかるようにすると,正三角形ができあがります.4点の場合は正四面体となります.

 球面上にN個の点を配置して,点間の最小球面距離が最大になるようにすることを考えましょう.正多面体の頂点は外接球上に分布していますが,どの2点の最短距離もできるだけ大きくなるような点の分布をなしているとは限りません.たとえば,6個あるいは12個の点の分布はそれぞれ正八面体と正20面体になりますが,8個の点については立方体にはならないからです.

 最小球面距離の最大化というミニマックス問題の解は,N=4,6,12の場合には,それぞれ正4面体,正8面体,正20面体の頂点に一致するような配置が導かれます.これらはすべて三角形面多面体(単体的正多面体)です.N=8の解は,単位球に内接し8個の頂点をもつ反プリズム(2個の正方形と8個の正三角形からなる),N=24では,アルキメデスの多面体(3,3,3,3,4)の頂点,N=20は未解決のまま残っています.

 一方,最大球面距離の最小化というマックスミニ問題の解は,N=6のとき,正則な二重ピラミッドの頂点,N=12のとき,反プリズム的二重ピラミッドの頂点であることが導かれています.二重ピラミッドとは,プリズムあるいは反プリズムの底面および上面にそれぞれひとつずつピラミッドをおくときにできる立体です.

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【3】デルタ多面体

 すべての面が正三角形で構成されている立体をデルタ多面体(正三角面体)といいます.正4面体,正8面体,正20面体は正三角形だけから作られる正多面体ですが,このほかに5種類,計8種類の凸デルタ多面体を作ることができます.

 結論を先にいうと,正3角形ばかりを集めると4面体から20面体まで,18面体以外の8種類すべての偶数多面体ができあがります.そのうち,正4面体,正8面体,正20面体は正多面体にも分類されるのですが,デルタ多面体はそれらを含めて全部で8種類あることがわかりました.逆にいうと,もし多面体の各面が正三角形ならば8つの多面体の中のどれかひとつであるということになります.

 同様に,正方形1種類では立方体のみ,正5角形1種類では正12面体のみが得られ,正6角形以上の正多角形ばかりでは凸多面体はできません.結局,1種類の正多角形でできる凸多面体は合計10種類あることになります.

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 3次元凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,

  v−e+f=2  (オイラーの多面体定理)

が成り立ちます.これは3次元立体について,0次元の特性数であるv,1次元の特性数であるe,2次元の特性数であるfの関係を述べたものと解釈され,最も美しい数学の10大定理の1つに挙げられるものです.

 また,正則な多面体とはその面が正多角形で,どの面にも同じ数の面が集まっている凸多面体のことで,正多面体では

  pf=2e,qv=2e

でしたが,正則とは限らない一般の多面体では

  Σpi=p1+・・・+pf=2e,

  Σqi=q1+・・・+qv=2e

となります.

 pi=3,3≦qi≦5ですから

  3f=2e   (fは偶数)

  3v≦2e≦5v

これをオイラーの多面体定理

  v−e+f=2

に代入すると

  6≦e≦30

 これより

  4≦f≦20,(3≦v≦20)

が得られます.3f=2eよりfは偶数ですから,4面体から20面体までの偶数多面体がデルタ多面体の候補となります.

   f      e      v

   4      6      4

   6      9      5

   8     12      6

  10     15      7

  12     18      8

  14     21      9

  16     24     10

  18     27     11

  20     30     12

 オイラーの多面体定理によってそれ以外にはないことを証明することができましたが,1942年,フロイデンタールによってデルタ18面体は存在しないことが証明されました.

 ところで,f=18(v=11)が十分条件を満たさないことはどのようにして証明されるのでしょうか? この点について一松信先生にうかがったのですが,この証明は殊の外厄介ということでした.それは凸多面体という条件がつくためなのですが,結局は頂点数11の形を分類してどのような組でも凸体にならないことを確かめるという手間を要します.

 f=18の不可能性の証明は端的にいって「あらゆる可能性を調べて凸体にならない」ことを示すような厄介な話です.オイラーの士官36人の問題の不可能性の証明などもその1例です.

 なお,「ポリドロン」には辺の長さの等しい正3角形,正4角形,正5角形,正6角形のユニットがあります.ポリドロンによるf=18の模型を掲げますが,凸体に近いものの凸でない多面体ができあがりました.同じf=18を2つの方向から見た図を掲げます.

 この構成では

  佐藤耕太郎(小学6年生),佐藤一麦(小学4年生),佐藤千種(2才)

の協力を得ました.「ポリドロン」は東京書籍がその取り扱い店となっています.→連絡先:tel:03-5390-7513,fax:03-5390-7409(大山茂樹)

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【4】直線上を転がるときの正多角形の頂点の軌跡

 1辺の長さ1の正三角形が直線上を回転するとき,正三角形の1つの頂点に着目すると,その頂点が描く軌跡は中心角2π/3で半径1の円弧を連ねた波型曲線となります.正方形の場合,その頂点は中心角π/2で半径1の円弧と中心角π/2で半径√2の円弧を連ねた波型曲線を描きます.

 固定した直線上を円が滑らずに転がるとき,回転円上の固定点のなす軌跡がサイクロイドです.正n角形の場合も円弧をつないだ曲線となるのですが,円の場合は正n角形のn→∞のときの極限として,サイクロイドを描くというわけです.

サイクロイドは重要な性質をもっていて

 [1]最速降下線

 [2]等時曲線

などいくつかの興味深い特性があります.サイクロイドはそもそもガリレイによって発見され,ホイヘンスによって振子時計の設計に使われ,そしてパスカルの積分法の研究にも貢献しています.サイクロイド弧が囲む面積は3πr^2(回転円の面積の3倍に等しい),弧長は8r(回転円に外接する正方形の周に等しい)になります.

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 先日,宮本次郎先生(釜石南高校)より「杜陵サークル」の会報が送られてきたのですが,その中の下河原英先生(釜石工業高校)の記事が目にとまりました.『正多角形の頂点のうち,直線に接しているものの一方に目印をつける.そうして正多角形を直線に沿って転がしたとき,正多角形が停止する度に目印をつけた頂点の位置を直線(!)で結んでいく.目印をつけた頂点が再び直線に接したところで回転を止める.』このようにして得られた折れ線で囲まれた面積は正多角形の面積のちょうど3倍になっているという話題であり,証明も添えられてありました.

 サイクロイドは回転角を媒介変数として回転円の半径をaとすると

  x=a(θ−sinθ),y=a(1−cosθ)

と書くことができますが,

  S=∫ydx=a^2∫(1−cosθ)^2dθ=3πr^2

  L=∫(1+y’^2)^1/2dx

   =a√2∫(1−cosθ)^1/2dθ

   =4a∫sin(θ/2)dθ=8a

などの解析的表現よりも,図形的表現の方が高校生にとってはよほど印象深いと思われ感心した次第です.

 弧長は,正n角形の外接円の半径をrとすると

  Ln=4rsin(π/n)Σsin(kπ/n) (k=1=n-1)

で与えられるのですが,

  sinα+sin2α+sin3α+・・・+sinnα

 =sin(nα/2)・sin{(n+1)α/2}/sin(α/2)

なる関係にα←π/n,n←n−1を代入すると

  Σsin(kπ/n)=1/sin(π/2n)

  Ln =4rsin(π/n)Σsin(kπ/n)

    =4rsin(π/n)/sin(π/2n) → 8r  (n→∞)

となって同様に証明できます.これによりサイクロイドの弧長が外接円の直径の4倍であることが示されました.

 高校生にとって難しいと感じられるところは,正弦・余弦の和公式を用いていることでしょう.正弦・余弦の和公式には正n角形をひとつの頂点から引いた対角線でn−2個に分割したときの面積と周長という幾何学的意味があることがわかったわけですが,以下はコラム「地図と三角法」より正弦・余弦の和公式を易しく説明した箇所を抜粋したものです.ご参考までに.

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[1]正弦・余弦の和公式

 等差級数

  S=1+2+3+・・・+n

の値を求めるのに,逆順にして

  S=n+(n−1)+(n−2)+・・・+1

辺同士を加えると

  2S=(n+1)+(n+1)+(n+1)+・・・+(n+1)

より,

  S=n(n+1)/2

 これが等差級数の和公式で,これを使うと,たとえば1から100まで数の合計が5050であることが瞬時に計算できることはご存知であろう.

 この取り扱いと似た方法で,正弦の和公式

  sinα+sin2α+sin3α+・・・+sinnα

 =sinnα/2sin(n+1)α/2/sinα/2

を証明してみよう.

(証明)

  T=sinα+sin2α+sin3α+・・・+sinnα

  T=sinnα+sin(n−1)α+sin(n−2)α+・・・+sinα

 ここで,和から積への式

  sinα+sinβ=2sin(α+β)/2cos(α−β)/2

を用いると

  2T=2sin(n+1)α/2{cos(1−n)α/2+cos(3−n)α/2+・・・+cos(n−3)α/2+cos(n−1)α/2}

 両辺にsinα/2を掛けて,積から和への公式

  sinαcosβ=1/2{sin(α+β)+sin(α−β)}

を用いると

  2Tsinα/2

=sin(n+1)α/2{sinnα/2+sin(1−n/2)α+・・・+sin(−1+n/2)α+sinnα/2}

=2sin(n+1)α/2sinnα/2

 同様に,余弦の和公式

  cosα+cos2α+cos3α+・・・+cosnα

 =sinnα/2cos(n+1)α/2/sinα/2

も証明できる.これらの式において,α=π/nとおくと

  Σsinkπ/n=cotπ/2n

  Σcoskπ/n=1

 さらに,

  sinα+sin3α+sin5α+・・・+sin(2n−1)α=sin^2nα/sinα

  cosα+cos3α+cos5α+・・・+cos(2n−1)α=sin2nα/2sinα

α=π/(2n+1)とおくと,

  Σcos(2k−1)π/(2n+1)=1/2

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[2]正弦・余弦の積公式

 正弦・余弦の和公式はフーリエ級数との関連で研究された歴史がある.一方,和公式ほどよく知られていないが,正弦・余弦の積公式としていろいろな公式が登場してくる.ここでは証明は省いたが,複素数を使って証明するのが一番の近道であろう.

  Πsinkπ/n=sinπ/n・・・sin(n−1)π/n

          =n/2^(n-1)

  Πsin(θ+kπ/n)

 =sin(θ+π/n)・・・sin(θ+(n−1)π/n)

 =sinnθ/2^(n-1)sinθ

 ここで,θ→θ−π/2nと置き換えれば

  Πsin(θ+(2k−1)π/n)=cosnθ/2^(n-1)

θ=0とおけば

  Πsin((2k−1)π/n)=1/2^(n-1)

また,θ=π/2とおけば

  Πcoskπ/n=sin(nπ/2)/2^(n-1)

などを導き出すことができる.

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