■長い長い証明(その3)

 数学の世界では余分なものがなく美しい証明が「エレガントな証明」として賞賛されてきた.しかし,近年の状況は異なっている.エレガントな証明の難しい問題については力づくで,あらゆる場合を虱潰しにあたる証明が注目されるようになってきたのである.

 コンピュータ計算による網羅的な探求の例としては,以下の3つの有名な極値問題が解決されたことがあげられる.

(1)1998年,ヘールズはケプラーの球の詰め込み問題(1611年)が正しいことを示した.

(2)1976年,ハーケンとアッペルは4色問題(1852年)が正しいことを示した.

(3)2010年7月,トマス・ロキッキは「神の数」が20であることを証明した.ルービックキューブのいかなる配置も20手以下で解けるのである.

 パズル史上最大のヒットとなったルービックキューブは26個の小さな立方体を3×3×3に並べたもので,6色が6面に割り振られている.ルービックキューブの配置は約43×10^18(4325京)通りあるが,いかなる配置もn手以下で解けるという最小手数はいくつかという数学問題があり,この問題の解は「神の数」と呼ばれるようになった.

 ロキッキは195億通りの配置を調べ神の数が22以下であることを突き止めたが,彼は神の数が20であることを確信し,そして解いたのであった.

 ほんの少し前まで,これほど膨大な場合についてすべて検証するという証明補方は実現不可能であった.しかし,この証明をコンピュータを使わずにたどることは不可能である.そのような虱潰しの証明は巨大な象の様だという意味で「エレファントな証明」と呼ばれる.

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