■オクターブと調律(その2)

【1】ピタゴラスとドレミ

 ピタゴラスは弦の長さを半分にして弾いたとき,1オクターブ高い音がでることを突き止めました.そして,1オクターブの間を振動数が整数比(に近い比)になるように分割していって,ドレミファソラシドという音階の基礎を築いたといわれています.

 弦の長さを1/2にすれば2倍の周波数,1/3だけ短くすると3/2倍の周波数(5度),1/4だけ短くすると4/3倍の周波数(4度),1/5だけ短くすると5/4倍の周波数(3度)が得られます.

 最も単純な整数比は1:2(オクターブ),次に単純な整数比は2:3(5度)もしくは1:3(4度)ですが,1:2(オクターブ)と2:3(5度)の2つだけにもとづいてドレミの周波数を決めてみましょう.ドの周波数を1とします.ドから5度上のソは(3/2),さらに5度上の高いレは(3/2)^2,1オクターブ低いレは(3/2)^2/2になります.

 すると,ミは(3/2)^4/2^2,ファは(3/2)^6/2^3,ソは(3/2),ラは(3/2)^3/2,シは(3/2)^5/2^2,高いドは(3/2)^7/2^3となって,ちょうど2にならないのでまずいことが起こります.3^n/2^mに形の数では,こうしたズレな避けられないのです.

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[補]たとえば,いくつの5度音程によってオクターブの整数倍が得られるかというと

  (3/2)^x=2^y → 3^x=2^(y-x)

この整数解はありませんが,3^5=243 〜 2^8=256より,x=5,y=3の近似解が存在します.すなわち,5度音程5つで3オクターブになるというわけです.また,3^5〜2^8の次に一番良い近似が3^12〜2^19で,12の5度音程で7オクターブになります.

 同様に

  (4/3)^5〜2^2

  (5/4)^3=2

4度音程5つで2オクターブ,3度音程5つで1オクターブになります.

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【2】バッハの12平均律

 ピタゴラス音階では転調が難しいという深刻な問題がありました.この問題への対策としては,すべての半音をまったく同じ比率にしてしますことが考えられます.

 現在使われている音階はピタゴラスの音階を改良した12平均律音階です.ピアノやオルガンのような鍵盤楽器では1オクターブの間を12の音に分けていますが,転調のために平均律,すなわち,1オクターブの音程を対数目盛を用いて12等分しています.

 バッハによってその基礎が作られたのですが,12平均律音階では半音上がるごとに振動数が2^1/12倍になります.

  r=2^1/12=1.059463094

としてf(x)=1,r,r^2,・・・,r^11,2=2^xですが,rは無理数ですから,ピタゴラス音階のように整数比で表すことはできません.

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