■スターリングの公式の図形的証明?(その63)

 空間充填2^n+2n面体の場合を振り返ってみたい.

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【1】n次元切頂八面体の外接球と内接球?

 正軸体の切頂では,S=n(n−1)/2として

 → x=(n−1)/S,y=(n−2)/S,z=(n−3)/s,・・・,w=0

となる.したがって,外接球の半径Rは

  R^2=x^2+・・・+w^2=(n−1)n(2n−1)/6S^2

    =2(2n−1)/3n(n−1)

 一方,内接球というわけではないが,

  x=(n−1)/S=2/n

として,(x,0,・・・,0)で接する球の半径rはr=2/nで与えられる.

 それぞれの体積は

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・R^n,π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n

であるから,n=2kのとき,

  π^k/k!・{(4k−1)/3k(2k−1)}^k

  π^k/k!・{1/k}^2k

 これとn次元切頂八面体の体積

  1/2・(2/n)^n・2^n=1/2・{1/k}^2k・2^2k

を比較すると,kが大きくなるにつれて

  n次元切頂八面体の体積>内接球?の体積

となることは明らかである.

 一方,外接球の体積は

  π^k/k!・{(4k−1)/3k(2k−1)}^k→π^k/k!・{2/3k}^k=π^k/k!・{√2/3k}^2k

  √2/3k>2/k

という計算をするまでもなく,常に

  外接球の体積>n次元切頂八面体の体積

である.

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【2】n次元切頂八面体の内接球?

 n次元切頂八面体には,もうひとつファセットがあり,ここでは正軸体の内接球の体積

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・1/n^n/2=π^k/k!・1/(2k)^k

とn次元切頂八面体の体積

  1/2・(2/n)^n・2^n=1/2・{1/k}^2k・2^2k

の大小比較を行ってみたい.

 k!/k^kと2(π/8)^kの大小を比較することになるが,

  1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k≦1/2^k-1

は証明済みである.

 π/8<1/2より,

  2(π/8)^k≦1/2^k-1=2(1/2)^k

n次元切頂八面体を正軸体の内接球で近似することによって,不等式が改良されたことになる.

 なお,

  正軸体の内接球の半径=1/√n=√n/n

であるから,n=4のとき,1/√n=2/nとなって,4次元切頂八面体(すなわち正24胞体)に内接する.しかし,n>5のとき

  1/√n>2/n

になって,内接球はn次元切頂八面体を包含しないことが示される.

 さらに,πe=8,539・・・より,1/e<π/8<1/2

  2exp(−k)≦2(π/8)^k≦2(1/2)^k

が示される.

 スターリングの公式は,kがおおきくなるにつれて

  n!/n^n〜√(2πn)exp(−n)

であるから,ここまでくればスターリングの公式に非常に接近した値が得られたことになる.

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【3】n次元切頂八面体の内接球?(その2)

 偶数次元における,正軸体と切頂正軸体の体積比較によって

  1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k≦2(1/2)^k

正軸体の内接球と切頂正軸体の体積比較によって

  1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k〜2(π/8)^k

が得られた.

 さらに,πe=8,539・・・より,

  1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k〜2exp(−k)

が示される.

 ここまでくればスターリングの公式

  n!/n^n 〜 √(2πn)/e^n

の√nのオーダーを図形的に得る方法を考えたいものである.それは,奇数次元(n=2k+1)の場合の正軸体の内接球と切頂正軸体の体積比較を考えることによって実現されるが,ここでは割愛したい.

  n!〜c^-1n^nexp(−n)

程度で十分であると考えられるからである.

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