■多面体はDNAをもっている(その4)

 かつてDNAには,その生物の形態・動態を決定するのに必要なすべての情報が含まれていると考えられていた(セントラル・ドグマ).

 もちろん,ゲノムはとても強い影響力をもっているが,現在ではDNAにはコードされていない情報が,生物にとっては書かせないことが明らかになっている.DNAには含まれていない表現型や遺伝子発現を総称してエピジェネティック過程と呼ばれる.

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[1]調節遺伝子のメチル化

 最初の発見されたエピジェネティック過程が,調節遺伝子のメチル化である.たとえば,調節遺伝子のシトシン塩基のメチル化はその領域のゲノムをスイッチオフし,結果としてコードされているタンパク質の生成量が少なくなる.

 脳腫瘍の薬剤耐性に関わる酵素であるMGMTの多寡は,その調節遺伝子のメチル化により決定されるため,医療現場ではMGMT量を調べてから,適切な抗がん剤が選択されていることを申し添えておきたい.

[2]RNA干渉

 1990年,20塩基ほどの短いRNA配列(siRNA,shRNA)が遺伝子をオフにして,タンパク質の生成をストップさせることが明らかになった.

 この「RNA干渉」はきわめて一般的な現象であって,遺伝子を恣意的にオンオフさせることの可能な遺伝工学的ツールを提供することになった.

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[雑感]いまのところ,多面体の形態形成にエピジェネティック過程はみあたらないが,それでも多面体は遺伝子をもっている.

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