■正20面体と正12面体の進化
[1]1908年,フランスの数学者エルミートは正20面体の幾何を使って,5次の代数方程式を解く方法を発見した.
[2]フラーは正20面体をジオデシックドームの設計に用いた.
[3]ウィルスの大多数は正20面体の外殻をもつか,らせん階段状の構造をしていることが明らかとなった.
[4]2010年のサッカーワールドカップでは,切頂20面体型のサッカーボールとは違う形のボールが使われた.
その後の進化を記してみたい.
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周期的な平面充填に対して,平行移動の周期がない非周期的平面充填については,1974年にイギリスの数理物理学者ペンローズの発見した2種類の菱形(太った菱形とやせた菱形)を組み合わせて平面を非周期的に敷きつめるものが最も構成要素の少ないものです.ペンローズタイルと呼ばれるこの敷きつめかたは,正五角形のような5重の対称性がありますが,隙間を生じません.
ペンローズタイルと同様にして,2種類の菱面体(太った菱面体とやせた菱面体)でともに合同な面をもつものを用いて,3次元を隙間なく埋める非周期的構造を作ることができます.これら2種類の菱面体は各面の菱形の対角線の長さの比が黄金比1:1.618[=(√5+1)/2]の黄金六面体です.黄金菱面体には2種類あり,細めで尖ったほうがacute ,太めで平たいほうがobtuse と呼ばれていますが,2つずつacute とobtuse が集まれば菱形十二面体,5つずつ集まれば菱形二十面体,10個ずつ集まれば菱形三十面体となります.このうち,菱形二十面体と菱形三十面体は5重の対称軸をもっています.ペンローズのタイル貼りは,三次元空間を2種類の黄金菱面体で非周期的に埋めつくしたときの平面への投影図であり,5回対称性という物質の新しい状態を2次元的に模似したものになっています.
[5]ウィルスタイリングでもこのような高次元幾何学が深遠な形で使われるようになった.たとえば,正20面体のウィルスの構造を6次元のD6格子と呼ばれる正20面体の対称性をもった格子を3次元空間に投影した形として理解されるようになったのである.
[6]植物の世界でも,Braarudoshaera bigelowii(正12面体の炭酸カルシウム(coccosphere)を形成する単細胞真核藻円石藻類)が見つかっている.
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