■スターリングの公式の図形的証明?(その39)

 超立方体,正軸体,正単体の体積はスターリングの公式を導出するのに有効には働かないので,このシリーズでは別の体積可測なn次元立体(2^n+2n胞体)を構成し,その体積を比較することによって幾何学的証明を試みている.

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【1】超立方体の球体近似

 球の体積

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n

とn次元立方体[−1,1]^nの体積

  2^n

を等しいとおいて半径を求めるが,ここでは偶数次元の場合(n=2k)だけを扱うことにする.

  2^n=2^2k

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n=π^k/k!・r^2k

したがって,

  r^2k≒k!・(4/π)^k

  r^2≒(k!)^1/k・(4/π)=((n/2)!)^2/n・(4/π)

となるような球がbest fitすることになる.r^2=1〜n.

 そこで,best fitする球(r^2=n−j)を考えると,n→∞のとき,j/nあるいは(n−j)/n=1−j/nの収束を調べるという問題になる.

  ((n/2)!)^-2/nπ/4=1/(n−j)

  ((n/2)!)^-2(π/4)^n=(n−j)^-n

  (π/4)^n=(n−j)^-n{(n/2)!}^2

 スターリングの公式を使って

  (n/2)!→√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)

とするのは正しくない.相対誤差は0に近づくが絶対誤差は無限大に発散するからである.そこで,

  (π/4)^n=(n−j)^-n{(n/2)!}^2

の両辺を

  {√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)}^2=πn(n/2)^nexp(−n)

で割ってから,極限をとってみよう.

 すると

  左辺=(πe/2n)^n/πn

  右辺=(n−j)^-n

となるから,さらに両辺にn^nをかけてから極限をとると

  左辺=(πe/2)^n/πn

  右辺=exp(j)

  j→nlog(πe/2)−log(πn)→nlog(πe/2)

  (n−j)/n→1−log(πe/2)

となり収束する.

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【2】正軸体の球体近似

 正軸体は4次元を除き空間充填多面体にならないが,球の体積

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n

と1辺の長さ1のn次元正軸体の体積

  2^n/n!

を等しいとおいて半径を求めてみる.

 偶数次元の場合(n=2k)だけを扱うことにするが,

  2^n/n!=2^2k/(2k)!

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n=π^k/k!・r^2k

したがって,

  r^2k≒(k!/(2k)!)・(4/π)^k

  r^2≒(k!/(2k)!)^1/k・(4/π)=((n/2)!/n!)^2/n・(4/π)

となるような球がbest fitすることになる.

 1辺の長さ1の正軸体の内接球と外接球の半径は,それぞれ

  √1/2n,√1/2

 そこで,best fitする球(r^2=1/2(n−j))を考えると,n→∞のとき,j/nあるいは(n−j)/n=1−j/nの収束を調べるという問題になる.

  ((n/2)!/n!)^-2/nπ/4=2(n−j)

  ((n/2)!/n!)^-2(π/4)^n=2^n(n−j)^n

  (π/8)^n=(n−j)^n{(n/2)!/n!}^2

 ここで,

  (π/8)^n=(n−j)^n{(n/2)!/n!}^2

の両辺を

  {√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)}^2=πn(n/2)^nexp(−n)

で割って

  {√(2πn)(n)^nexp(−n2)}^2=2πn(n)^2nexp(−2n)

を掛けてから,すなわち,

  2(2en)^n

を掛けてから,極限をとってみよう.

 すると

  左辺=2(πen/4)^n

  右辺=(n−j)^n

となるから,さらに両辺をn^nで割ってから極限をとると

  左辺=2(πe/4)^n

  右辺=exp(−j)

  −j→nlog(πe/4)+log2→nlog(πe/4)

  (n−j)/n→1+log(πe/4)

となり,収束する.

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【2】正単体の球体近似

 球の体積

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n

と辺の長さ1のn次元正単体の体積

  (n+1)^1/2/2^n/2n!

を等しいとおいて半径を求めてみる.

 偶数次元の場合(n=2k)だけを扱うことにするが,

  (n+1)^1/2/2^n/2n!=(2k+1)^1/2/2^k(2k)!

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n=π^k/k!・r^2k

したがって,

  r^2k≒(k!/(2k)!)・(2k+1)^1/2/2^kπ^k

  r^2≒(k!/(2k)!)^1/k・(2k+1)^1/2k/π=((n/2)!/n!)^2/n・(n+1)^1/n/2π

となるような球がbest fitすることになる.

 1辺の長さ1の正単体の内接球と外接球の半径は,それぞれ

  √1/2n(n+1),√n/2(n+1)

であるから,そこで,best fitする球(r^2=1/(n−j)^2)を考えると,n→∞のとき,j/nあるいは(n−j)/n=1−j/nの収束を調べるという問題になる.

  ((n/2)!/n!)^-2/nπ/(n+1)^1/n=(n−j)^2

  ((n/2)!/n!)^-2π^n/(n+1)=(n−j)^2n

  π^n/(n+1)=(n−j)^2n{(n/2)!/n!}^2

 ここで,

  π^n/(n+1)=(n−j)^2n{(n/2)!/n!}^2

の両辺を

  {√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)}^2=πn(n/2)^nexp(−n)

で割って

  {√(2πn)(n)^nexp(−n2)}^2=2πn(n)^2nexp(−2n)

を掛けてから,すなわち,

  2(2en)^n

を掛けてから,極限をとってみよう.

 すると

  左辺=2(2πen)^n/(n+1)

  右辺=(n−j)^2n

となるから,さらに両辺をn^2nで割ってから極限をとると

  左辺=2(2πe/n)^n/(n+1)

  右辺=exp(−2j)

  −2j→nlog(2πe/n)+log2/(n+1)→nlog(2πe/n)

  (n−j)/n→(1+log(2πe/n))/2

となり,収束しない.

[雑感]この結果は(その33)−(その38)の結果と整合しているように思える.当初は,面数2(2^n−1)の空間充填多面体(置換多面体,頂点数(n+1)!)を使えばよりよい上界・下界評価が可能になるかもしれないとかんがえていたのであるが,3^n−1面体に期待を掛けたい.

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