■素数がもたらしたもの(その21)
ゼータ関数は無限級数
ζ(x)=Σ1/n^x=1/1^x+1/2^x+1/3^x+1/4^x+・・・
として定義される関数です.すなわち,ゼータ関数は調和級数を一般化したものと考えることができます.x>1ならばゼータ関数は収束します.しかし変数を実数に限定している限り,x=1で∞となってしまいそれより左側に進むことができなくなります.
ゼータ関数を複素数へ拡張する必要があるのです.sinxはxが実数のときは−1から1までの値をとりますが,複素数のときは違います.ゼータ関数も同様です.ところが,オイラーが使っていた神秘的な等式
1+2+3+4+5+・・・=−1/12
1^2+2^2+3^2+4^2+5^2+・・・=0
1^3+2^3+3^3+4^3+5^3+・・・=1/120
1^4+2^4+3^4+4^4+5^4+・・・=0
では正数の無限級数の総和ですから無限大のはずですが負や零になっていて,一見して目がくらんでしまいます.
ζ(s)=Σn^(-s)
はRe(s)<1では意味をなさなくなるというわけですが,一体,リーマン・ゼータ関数の解析接続はどうなっているのでしょうか?
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【1】オイラーの計算
1749年にオイラーは発散級数を大胆に計算することによりこれらの結果をみいだしましたが,これらの式は現代数論では当然のことのように使われていて,リーマン・ゼータ関数の解析接続後にそれぞれ−1,−2,−3,−4での値として正当化されます.
無限大になるところをうまく引き去って有限の値をだすことを物理学の用語で「繰り込み」といいますが,オイラーの計算の仕方を紹介すると
φ(s)=1-1/2^s+1/3^s-1/4^s+・・・=(1-2^(1-s))ζ(s)
より
φ(0)=-ζ(0),φ(-1)=-3ζ(-1),φ(-2)=-7ζ(-2),φ(-3)=-15ζ(-3)
また,
f(x)=1+x+x^2+x^3+・・・=1/(1-x)
g(x)=xdf(x)/dx=x+2x^2+3x^3+4x^4+・・・=x/(1-x)^2
h(x)=xdg(x)/dx=x+2^2x^2+3^2x^3+4^2x^4+・・・=x(1+x)/(1-x)^2
より
f(-1)=φ(0)=1/2,g(-1)=-φ(-1)=-1/4,h(-1)=-φ(-2)=0
これから
ζ(0)=-1/2,ζ(-1)=-1/12,ζ(-2)=0,・・・
となる.
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【2】雑感
ゼータ関数が整数点でとる値はわかっても,半整数点での値や複素変数での値は?と問われれば答えに窮してしまう人は多いであろうと思う.かくいう小生もそうであるし,実際,関数等式はζ(1/2)の値を与えてはくれない.
大ざっぱでしかも歯切れの悪い回答になってしまったかもしれないが,かくいう小生には一を聞けば十を悟るだけの理解力が欠如しているので,自分にわかるように,何だそうだったのかと思えるように書けば多くの人を利することができるにちがいないと思いながら解説した.
しかし,「本当にわかりやすいか?」とあらたまって問われると,筆力未熟の所以,自信はぐらついてしまうのだが,この拙文が何がしかお役に立てればと願っている.
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